アカデミーの実写短編映画賞ノミネート作品です。

普段、あまり短編映画に触れる機会がありませんが、本作はNetflix配給なので、みることができました。

 

 「彼方に」2023

 

凄惨な事件で家族を失った後、ライドシェアサービスのドライバーとして失意の日々を送る男は、ある乗客を乗せたことをきっかけに、自らの悲しみと向き合うことを余儀なくされる。(Filmarks 映画より引用)

 

 

 

感想 (ネタバレ)

 

たった18分の映像に、これだけの想いをこめられるとは驚きました。

 

ロンドンの企業で重役として忙しい毎日を送っていた主人公、ダヨ。

今回も会議のために、娘のダンスの発表会もパスしかけたけれど、考え直して予定を変更し、妻と娘に出席をつげる。

そんなつかのまの家族の幸せが、突然の通り魔により一瞬にして失われる残酷さ。

 

一年がたっても彼の時は止まってしまって、仕事もやめ、人との関係もたち、タクシードライバーとして、生計をたてている。

 

ある時のせた夫妻は絶えず言い争っていて、なかに挟まれた黒人の娘に、自分の娘を重ね、心配しているようにみえる主人公。

 

家についても玄関の前で喧嘩をしている夫妻をみて、なかなかタクシーから降りない娘をうながすと、主人公の苦しみと共鳴したかのようなその娘が、彼を背後から抱きしめ、彼は突然地面にくずれおち、堰を切ったように声をだして泣きます。

 

これが主人公があの事件以来、はじめて感情を表にだした瞬間かもしれません。

そしてやっと彼は前に進む第一歩を踏み出せたかのようなエンディング。

 

二回みましたが、この作品は、自分にとって本当に大切な人を亡くした経験のある人には刺さる映画だと思います。

 

コロナ禍の大変な時期に母を亡くして三年以上たって、やっと私の心も平穏を取り戻してきたけれど、ふとした時にまだいろいろな想いがよぎります。

「彼方に」という邦題は何かわかるようでもピンとこなくて、原題のThe Afterこそがこの映画を端的にあらわしている気がします。

 

胸を打つ良い作品でした。

主人公を演じたナイジェリア系イギリス人のデヴィッド・オイェロウォもとてもよかったです。星よっつ。