ネットフリックスにあるアカデミー賞ノミネート作品を、事前知識なしで数作、鑑賞しています。今回は「伯爵」(原題はスペイン語でEl Conde)。
「伯爵」 2023
あらすじ
「伯爵」は、チリの近代史に着想を得た異世界を舞台に描く、ダークなホラーコメディ映画です。本作の主人公は、独裁政権の象徴アウグスト・ピノチェト。彼は、寒々しい大陸南端にある廃墟のような邸宅で、吸血鬼としてひっそり暮らしています。邪悪な欲望を満たすのは、この世で生き延びるため。250年ものあいだ生きながらえてきた末に、ピノッシュは生き血を飲むのをやめ、永遠の命という特権を手放す決意を固めていました。泥棒として人々の記憶に残ることに、これ以上耐えられなくなったのです。しかし、自分と相容れないご都合主義な家族の企みに反して、彼はある人との思いがけない関係を通じて、意気揚々と反革命的な情熱を持って人生を生き続けるという、新たな希望を見出します。(Filmarks映画より引用)
感想 (途中からネタバレあり)
ジャンルはダークホラーコメディ。
怖がりなのでホラー映画は避ける私ですが、これはコメディだからみてみた。
タイカ・ワイティティ監督の「シェア・ハウス・ウィズ・バンパイア」とかすごく好き。
それに吸血鬼ものってなんかロマンがあったりするんだよね。
アカデミーの撮影賞にノミネートされるだけあって、白黒映像が素晴らしい。
それと飛ぶシーンが秀逸。
内容は全然違うけれど、「第七の封印」(The Seventh Seal 1957年のスウェーデン映画)を連想しました。
だけどなんたってこれみて驚くのはプロットなんですよね。
ベネチア国際映画祭で最優秀脚本賞を受賞しているの、納得です。
チリの実在の独裁者、アウグスト・ピノチェトのことは知らなかったけれど、三千人を超える市民を虐殺し、罪に問われず91歳で亡くなったという本当に悪いヤツ。
その彼がフランス革命の頃から250年も生きた吸血鬼だったという話なんだけど、本当に人の生き血を吸う吸血鬼のような恐ろしい人だね。
彼を演じている俳優さんはもう88歳でチリでは有名な方だそうです。
チリの映画でみなさんスペイン語(だと思う)でしゃべっている。
それに英語の字幕つきでみていましたが、なぜかナレーションの女性の声が英語。
これがなぜ英語なのか、というのが最後の方でわかって、仰天です。
この女性は実は(ここからネタバレ)
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マーガレット・サッチャーだった!!!
そして独裁者アウグスト・ピノチェトは実は、、、
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吸血鬼マーガレット・サッチャーの子供だった!!!
白黒の雰囲気あるダークホラーコメディね、ふむふむ、、と少し余裕気味でみていた私はここで仰天しました。
いやぁ、完璧アートハウス映画。
さすが「スペンサー ダイアナの決意」(クリステン・スチュワート主演)や「ジャッキー ファーストレディ 最後の使命」(ナタリー・ポートマン主演)の監督さんらしい作品です。
人の血を飲むのをやめて死ぬつもりだったアウグストが、また子供に戻って吸血活動(独裁活動)を続けていくエンディングは寓話っぽい終わり方だけど同時にひやっとする風刺を感じて、これ、もう一度はじめからみなきゃ、という気持ちになりました。
人殺したり、心臓を素手で掴んでジューサーにかけたり、グロはグロなんですが、白黒のせいか私でもみることができました。
「哀れなるものたち」がグロくてあわないと思ったのは、実際の映像より、別々の動物の個体をつなぐとか、そういう倫理的な拒絶反応が強かったのかもしれません。
というわけでまるで情報ゼロ、期待ゼロでみた作品でしたが、意外性でわりと好きかも、と思うので、星四つ進呈です。