昨日は「ター/TAR」のレビューを書きましたが、今日は主人公ターがクリスタから贈られた本「挑戦 (challenge)」の著者、ヴィタ・サックヴィル=ウエストに関する映画、「ヴィタ&ヴァージニア」のレビューです。

 

 

 

 

 「ヴィタ&ヴァージニア」(2018)

 

 

1920年代のロンドン。ヴィタ・サックヴィル=ウェストは幸福な結婚生活を営む一方で、女性との恋愛にも熱心であった。そんなある日、ヴィタは気鋭の小説家、ヴァージニア・ウルフと出会った。ヴィタはウルフの謎めいた魅力にすっかり惹き付けられてしまい、あの手この手で彼女を振り向かせようとした。それが功を奏して2人は恋仲になったが、やがて、その稀に見る情熱的な関係も終わりを迎えることになった。(ウィキペディア)

 

実物はこちら。

 

 

左がヴィタ・サックヴィル=ウエスト、右がヴァージニア・ウルフ。

 

ヴァージニア・ウルフ関連の映画に関しては過去記事で書いたことがあります。

 

「ダロウェイ夫人」(1997)と「オルランド」(1992)はヴァージニアの著書の映画化。

「めぐりあう時間たち」(2002)は「ダロウェイ夫人」をモチーフに異なる時代に生きる三人の女性の1日を描いていますが、その三人のうちの一人、ヴァージニア本人を演じたのはニコール・キッドマンです。

 

このレビューを書いた時、「ヴィタとヴァージニア」という映画があることを知って探したら、オーストラリアのSBSという放送局の無料配信映画サービスにあったので視聴!

ところが1時間50分と、それほど長い作品でもないのに、何度みても途中で寝てしまうのです。

私には珍しく、もう絶対無理、とあきらめてしまいましたが、今回「ター/TAR」にヴィタの本がでてきたので、よし、再チャレンジだ〜と、とうとう最後までみることができました! パチパチ拍手

 

 

 

感想

 

ヴィタとヴァージニアの書簡を元にした1992年の舞台劇の映画化です。

 

ヴァージニアの役は、はじめはエヴァ・グリーン、次にアンドレア・ライズボローがキャスティングされたけれど、最終的にエリザベス・デビッキになったらしい。

彼女はとてもきれいで繊細な役柄にあっていたけど、ヴィタ役のジェマ・アータートンと並ぶと背が高すぎるのが残念。「ザ・クラウン」のダイアナ妃役は完璧なんですが。

 

私にとって一番の問題は主役のジェマの独特の声や、押しの強い顔の表情や演技が好きになれなくて、彼女に感情移入できなかったこと。

ヴァージニアへの手紙の内容を伝えるのに、何度も彼女の顔のクローズアップになって観客に語りかける演出とか、いらないな〜と思いました。

 

演出といえばヴァージニア・ウルフは躁うつ病とも双極性障害だったとも言われるけれど、その発作が出た時、植物が部屋中に生えてくるようなCGはおぉっとは思ったけどその場面だけだったのが唐突に感じたし、音楽も現代的なビートがず〜っとなっているのが邪魔に感じました。

 

舞台は1920年代で貴族の館だから、当時のファッションとか超豪華なんですが、なんだかいろいろ悩んでいても、大金持ちの道楽的に感じられたので、あまりヴィタとヴァージニアの関係を表すのにふさわしいみせかたではなかったような気がします。

あぁ、でもヴィタ役のジェマ・アータートンを好きになれたら、感じ方も違ったかも。

 

でもこの映画を理解しようと当時のことを調べたために、ヴァージニアが6歳ごろから20歳年の離れた異父兄に性被害にあっていたこと、それが彼女の精神状態に影響したのかもしれないこと、芸術家や学者の集まりである知的サークル、ブルームズベリーグループのコアメンバーであったことなど、知りました。ボヘミアンで、性の問題について進歩的で、同性愛やオープンマリッジにも理解があったことなど、大学の授業では聞かなかったなぁ(笑)

 

そんなヴァージニアの恋人であったヴィタとの関係がこの映画に描かれているので、映画的には星三つをきってしまうけれど、学ぶきっかけになったのはよかったです。

なんといってもあのティルダ・スウィントンが演じた「オルランド」はヴィタとサックヴィル家の歴史をモデルに書かれた話なので。

男性から女性へと変化し、4世紀を生き、男女の両方との関係を楽しむ人物はヴィタだったのですね。

 

で、「ター/TAR」にでてきたヴィタの本は何かというと、これはヴァージニアと出会うよりずっと前に既婚者のヴィタが10代の頃恋愛関係にあったヴァイオレット・ケッペル=トレフューシスと駆け落ちした時の話なのですよね。

 

そしてなんとこのヴァイオレットさんの母がアリス・ケッペル。

エドワード7世の愛人だった人で、あのチャールズ国王の妃カミラはこの方の曾孫にあたります。

 

おぉ〜、ターをみて、カミラさんにたどりつくとは思わなかったです。(笑)

 

 

おまけ:

 

ヴィタを演じたジェマ・アータートンは21歳の時、『007 慰めの報酬』でボンドガールやってました。

 

 

このあと重油漬けに、、。

 

 

おまけ2:

 

あの美しかったイザベラ・ロッセリーニさんにこんな変な帽子をかぶせないでほしい、、。なんだか昆虫系。

 

 

いや〜、映画って勉強になりますねウインク