ずっと劇場鑑賞したいと思っていた「生きる Living」(2022)。

先週メルボルンの美しい映画館でみることができました。

 

 

黒澤明監督の名作映画「生きる」を、ノーベル賞作家カズオ・イシグロの脚本によりイギリスでリメイクしたヒューマンドラマ。

1953年、第2次世界大戦後のロンドン。仕事一筋に生きてきた公務員ウィリアムズは、自分の人生を空虚で無意味なものと感じていた。そんなある日、彼はガンに冒されていることがわかり、医師から余命半年と宣告される。手遅れになる前に充実した人生を手に入れたいと考えたウィリアムズは、仕事を放棄し、海辺のリゾート地で酒を飲んで馬鹿騒ぎするも満たされない。ロンドンへ戻った彼はかつての部下マーガレットと再会し、バイタリティに溢れる彼女と過ごす中で、自分も新しい一歩を踏み出すことを決意する。(引用元)

 

 

レビュー

 

昔はオーストラリアのテレビでみられる日本映画ってジャンルがとても限られていて、古い白黒作品とかタケシさんのとかがよく放映されていたのですが、そんな時出会って大好きになったのが、黒澤監督の「七人の侍」(1954)と「用心棒」(1961)でした。

三船敏郎さん、かっこよかったな〜。

でも「生きる」という映画は聞いたことがなくて。

海外向けに侍ものばかり紹介されていたのかな。

 

でもその時、黒澤監督のすごさがわかったし、ビル・ナイさんの独特の個性ある演技が大好きだし、日本映画を英国を舞台にリメイクするといっても、日本にルーツをもつカズオ・イシグロさんの脚本ならきっと大丈夫、と、今年、四本目の劇場鑑賞をはたしました。

 

はじめの1953年のロンドンの映像からすっかり心をうばわれ、あとはもうこの物語にのめりこみました。

 

人はみないずれは死んでいく存在だけど、日頃それを意識して生きているわけではない。

余命を知ることではじめて自分の生きる意味を考えるとは、誰にとっても起こりうることで、だからこそ今をどう生きるべきか、と多くの人の共感をえるのだろうと思います。

 

私も同じ職場で毎日毎日働いて、長い年月をすごしてきている自分を重ね合わせて、深く感じるものがありました。

 

イシグロさんがビル・ナイさんを念頭に脚本を執筆したというだけあって、本当にビルさんにぴったりな作品。

これまでもユニークなキャラクターで光っていたけれど、主役として彼の真価を発揮できる作品にめぐりあえて本当によかったと思います。

 

「ザ・ホエール」をみていないから比較はできないけれど、できたらビルに主演男優賞をあげたかったな。彼の歌のシーンにはほろっとしました。

 

日常のこなすことの厳しさに負けず、たまにはこういう映画をみて、生きる意味を考えてみたいと思います。

 

 

 

PS

鑑賞した劇場はメルボルンの郊外、バルウィンにある1930年アールデコ建築の映画館です。この映画に雰囲気がぴったりで楽しめました。