「愛すべき夫妻の秘密」(2021)
先日、ニコール・キッドマンが「アイ・ラブ・ルーシー」のルシル・ボールを演じる「愛すべき夫妻の秘密」をプライムビデオでみました。
『愛すべき夫妻の秘密』は、2021年制作のアメリカ合衆国の伝記映画。 1950年代にアメリカで放送された人気シットコム『アイ・ラブ・ルーシー』で主人公のリカード夫妻を演じたルシル・ボールとデジ・アーナズの関係を描く。アーロン・ソーキン監督・脚本、ニコール・キッドマン、ハビエル・バルデムらが出演。 ウィキペディア
日本語予告がYouTubeにないようだったので、この方の1分映画紹介をつけておきますね。
レビュー
『アイ・ラブ・ルーシー』は50年代にアメリカで放映されて大人気だったコメディで、私の前の時代なので一度もエピソードをきちんとみたことはありません。
それでも『アイ・ラブ・ルーシー』に特別の想いがあるのは、小学生の時にはじめて家族で行った海外旅行「アメリカ西海岸とハワイの旅」を思い出すから。
母がまだ存命中に久しぶりに古い映写機をだして、当時の8ミリビデオの映像を一緒にみたら、私はピアノの発表会みたいな素敵なワンピースに黒いエナメルの靴という正装で、弟は入学式のようなきちんとしたスーツ姿、パンナムのバッグをもって空港に向かっていて、今とは隔世の感がありました。若き日の家族の映像は宝物、、。
LAでは、定番のビバリーヒルズのツアーやディズニーランド、ユニバーサルスタジオによったのですが、当時のユニバーサルスタジオに『アイ・ラブ・ルーシー』の公開スタジオセットがあったのです。
番組のことをよく知らなかったのに、何故かこの時のスタジオの様子を鮮明に覚えてます。(でもこの映画をみたら、あのスタジオはもしかしたらユニバではなく、実際のスタジオ見学をしたのかしら、とも思えてきました。)
その後「プリティウーマン」でジュリア・ロバーツが「アイ・ラブ・ルーシー」の有名なブドウを踏むシーンをテレビでみて大笑いしてるのをみて、あぁ、知ってる、と思って嬉しかったし。
オーストラリアでたまたまみた「ジーグフェルド・フォリーズ」(1945)にルシール・ボールがゴージャスな姿で出演していたので驚いたし。
そういうルシール・ボールへの興味からこの映画をみましたが、ニコール・キッドマンは果たして適役だったのか、という思いはありました。
ニコールのクール・ビューティーの顔立ちはどんなに声や仕草を似せてもニコールで、体をはったコメディエンヌのルシールのイメージがどんどん崩れていく。
共産党員だったという疑いをかけられて、すべてが終わろうとしている大変な時だったし、天才コメディアンとして納得がいくまで他人にも厳しい彼女は、その口の聞き方や態度も、たしかにそうだったのだろうけれど、ニコールというフィルターを通すと、みていてあまり心地よくないのです。
これがはじめにキャスティングされていたケイト・ブランシェットだったら、違ったかも、とつい思ってしまいました。
かの有名なブドウ踏みのシーンなど、白黒で撮られたコメディシーンの映像はまさに当時のルーシーそのもの、というかんじで、素晴らしかったんですけどね。
実生活でも番組でもルーシーの夫であったデジを演じたハビエル・バルデムはまったく本人に似ていないのにもかかわらず、仕草などがそっくりで、やんちゃで若々しい演技もなんだか可愛くみえました。
この似てない二人のキャスティングをみると、もっと他にも適役はいたけれど、集客のためにはスターパワーが必要、という制作事情を勘繰ってしまいます。
あとは最近嫌なやつの役が多かったJ・K・シモンズが好演してたのは嬉しく思いました。
脚本的にはハリウッドの「赤狩り」とルシールの妊娠と亭主の不誠実さを全部一緒の週の出来事にしてしまうというのは、いくら「伝記映画」に映画的脚色は避けられないとしても、ちょっと強引だなぁ。本人が生きていたらどう思うかなぁ、と思いました。
でもだからこそ少しハスに構えて映画をみていた私も最後の最後で、うわっ!ときたので、それはさすがアーロン・ソーキン監督の手腕だと思います。
「トランボ」やエリア・カザン、「J・エドガー」を思い出しましたよ〜。
この映画、ある程度当時の事情や、「アイ・ラブ・ルーシー」、ルシール・ボールを知っている人向きの映画かな、と思います。
星三つ半。
おまけ:そうはいっても「アイ・ラブ・ルーシー」を知らないんだよ〜という人には、プライムビデオのこちらのドキュメンタリーがおすすめです。
ルーシーとデジ ~知られざる真実~(2022)