ネットフリックスで「ギレルモ・デル・トロのピノッキオ」をみました。
10歳の息子を亡くしたゼペットは、悲しみから立ち直れず、木を彫って息子を作ろうとする。 翌朝、ゼペットが目覚めると、命を吹き込まれた人形ピノッキオがいた。 自由に振る舞うピノッキオに初めは手を焼いていたゼペットだったが、二人は次第に心を通わせ合うようになる。(ヤフー映画より引用)
レビュー
ディズニー映画の中でピノキオはそれほど好きな作品ではありませんでしたが、大好きな『シェイプ・オブ・ウォーター』『パンズ・ラビリンス』『ヘルボーイ』のデル・トロ監督なら、絶対見ようと思いました。
昨今のアメリカの賞レースには失望しているものの、先日のゴールデングローブで長編アニメーション映画賞受賞、アカデミー賞もノミネート(受賞確実と思います)ですから、クオリティは高いはず。
監督の名前がタイトルにつくぐらいだから、デルトロの作家性が顕著な作品なのは予想できましたが、はじめは、あれれ、子供向きかな、と。
(こおろぎの声のユアン・マグレガーさんの演技によるところもありますが。)
それなら大人はこの見事な、イタリアの造形美あふれるストップアニメーションを堪能するのだな、と思いながら、ミュージカルでもありますからゆったりした歌声を聴きくうちに、不覚にも寝てしまいました!(夜遅く家でみると、そうなりますね、、。)
いやいや、あきらめないぞ、と昨日もう一度トライしたら、原作の書かれた1881年ではなく、この映画の背景はムッソリーニが台頭した1930年代ファシズムの時代だとわかり、「パンズラビリンス」のように、あぁここにデルトロさんの描きたかったことがあったのか、と思いました。
それはそのとおりなのですが、真の主題はそこにはなく、この、どうみてもADHDにみえる跳ねっ返りのピノッキオがいろいろひどい目にあって、改心して「良い子」になるのではなく、父親のゼペット爺さんの方が息子のピノッキオから学び、彼を愛し、ありのままの姿をうけいれることを逆に教えられるというお話なのだとわかって、うわっ、と最後は泣きそうになりました。
過去のディズニー映画は何かと原作本から毒や残酷さをとって、みんなに受け入れられるような良い子のお話に変えてしまうのが常でしたが、これは原作やディズニーのように悪い子が改心して良い子になるのではなく、親の方が息子から学ぶ愛のお話なので、本当にすごいと思いました。
デルトロさんの異形の者たちの造形もやはり素晴らしいし、それをささえたストップモーションアニメーターさんたちにも脱帽です。
そして見終わってから声の出演者を確認してまたびっくり。
ユアン・マクレガー、デヴィッド・ブラッドリー、ティルダ・スウィントン、クリストフ・ヴァルツ、ケイト・ブランシェット、ロン・パールマン、ジョン・タトゥーロ、ティム・ブレイク・ネルソンとなんと豪華。
特にケイト・ブランシェットさんの役なんて、とても意外でびっくり!
子役の男の子たちも本当によかったです。
大人ならぜひ字幕版にして声を楽しんで欲しい♪
ミュージカル・ファンタジー・ストップモーションアニメ映画という珍しいジャンルなので、はじめはどう見ていいのか戸惑いましたが、しっかり最後までみて、デルトロ監督らしいフェアリーテールを味わうといいと思います。
四つ星半。本当に見てよかったです。いつかもう一度見よう♪