
オーストラリア人の俳優、ヒース・レジャーが、今から10年前に、まだ28歳の若さで睡眠薬の過剰摂取により亡くなった時は、本当にショックでした。
バットマンのジョーカー役を演じ、キャリアは絶好調を迎えていたのに。
ヒースがはじめ青春映画のイケメン役などを演じていた時は特に興味がなかったけれど、2005年の「ブロークバックマウンテン」や2006年の「キャンディ」での演技を見て、衝撃をうけました。
そんな彼が「バットマン・ビギンズ」の続編、「ダークナイト」の公開前に突然亡くなって、マスコミはジョーカーという狂人の役柄に取り憑かれて死んだのだと書き立てたけれど、私も映画をみたらたしかにそうだろう、と確信して、こんなレビューもその時書きました。
ヒースが逝ってしまった理由、、。
あれから10年。
「I am Heath Ledger アイ・アム・ヒース・レジャー(原題)」というドキュメンタリー映画をテレビでみました。
日本では公開されるかな。家族や友人たちがつくったヒースの追悼のような映画です。
ヒースの死因をシビアに検証するとか、彼のダークサイドを明らかにするというようなクリティカルな視点で撮られたドキュメンタリーではなく、あくまでもヒースを懐かしみ、ヒースの大きな人間性を見る人に伝え、リスペクトをもって、彼に感謝しいとおしむ映画。
そのためヒースのファンむきの作品とも言えるので、一般公開というより、DVDリリースになるかもしれませんね。
私はヒース・レジャーは演技の天才と思っていたけれど、彼が自分でこんなにたくさんの映像を撮っていたとはしりませんでした。
普段からつねに自分の生活をカメラや写真で撮っていたので、その膨大な映像をつかって映画が作れてしまうほどなのです。
ナルシストとも思えるけれど、彼は映像や写真の世界に魅せられていたクリエイターなのですね。
そればかりではなく、音楽も愛し、自分で会社を設立して、監督として音楽ビデオも撮っていたほど。
19歳でアメリカにわたり、俳優として成功していくのですが、自分の家をたくさんのオーストラリア人の友達に解放して、人によっては何ヶ月もいついてしまったり。
ビッグで物惜しみせず、友人を大切にし、つねにエネルギーにあふれ、止まることのないハイパワーの人だったようです。
その絶え間ないエネルギーはアーティストとして創造することに使われたけれど、とても消化しきれず、不眠症で、一日の睡眠は二時間ほど、またはまったく眠れない日も続いたそうです。
彼の家族や友人たちの話によると、そんな生きるエネルギーに満ち溢れたヒースが、ジョーカーに取り憑かれて鬱状態になることはない、というのですが。
たしかその四ヶ月前には自分の娘を産んだミシェル・ウィリアムズと別れています。
大切な娘とも別れることになって。
そして不眠状態のなか、狂人を演じ、次の作品「Drパルナサスの鏡」では寒さの中、体も弱っていたヒース。
この映画はヒース自身が撮影した映像のほか、家族友人のインタビューがたくさんでてきますが、ナオミ・ワッツはじめ、過去の恋人も出演しています。
でも肝心のミシェル・ウィリアムズはでていないのですよね。
ミシェルこそヒースの最後の時の鍵をにぎっている人物だと思うのですが、そのあたりが流されているのが、真のドキュメンタリー映画というよりは、友人がつくった思い出ビデオのように感じる所以なのかもしれません。
それでも私はヒースが好きだったから、この映画で知らなかった彼の人物像がわかって、みてよかったと思っています。
星3つ半です。