いとぐるま
私の好きな
御話し。
糸車の針に刺されて
眠っちゃうお姫様が
すきだった
ちくっと刺される
おひめさまがすきだった
どんな痛みか
想像していた
お姫様に憧れた私は
お姫様にはなれなかった
だけど
刺されても
刺されても
あたしは死なないし
眠ったりなんかしないんだから！
眠っても
王子さまなんかこなくても
てめぇで起きてやるからな。
待ってろよ
って
さ、
えぐって
抉って
彫って
さ、
最後の
ひとかたまりになるまで
あたしを提供してやるから。
あたしは
こんな痛みで
倒れたりしない
いきることは
痛みを伴うんだ
輪廻して
まわって
つないで
いとぐるま
ねえ
あたしの痛みを
深掘りしたら
代償は何が在りますか。
あたしの痛みを
根こそぎ解放したら
あたらしいあたし様になれるの？
あたしは
ひとりだけなんだわ
おうじさまより
尊いんだ。
バカ言え。って
声が聞こえた気がした。
いとぐるま
糸ぐるま
あたしを刺して
あたしに『生』を
わからせる。
いたい
痛い。
いきるのは痛い。
だけど
時々愉しい。