『終点のあの子』柚木麻子著

 

2023年開成中で素材文となった物語文です。

たしか発売当初は、この本の帯に「女子高生の友情はすぐに敵意にかわる」なんて書いてあったと記憶しています。さて12歳の男子たちが、入試試験という緊張感の中で、この女子高生の気持ちを読み取る問題に挑戦する。とても難しかったと思います。
 

【あらすじをご紹介】
 

舞台は世田谷にあるプロテスタント系の女子高。
(作者の母校である恵泉女学園だと思われます)

 


主人公の立花希代子(きよこ)は、中高一貫校の中学から内部進学で高校に進級。
自由奔放なうえ、誰とでも付き合えるのに群れない朱里(あかり)と出会います。希代子は朱里にあこがれ、二人は接近していくのですが、あることがきっかけで二人には距離ができてしまいます。希代子の中でどんなふうに友情が屈折していくのか、女子高生の繊細な「気持ちの揺れ」が表現されています。

 

 

 

問題となったのはどんなところか!

 

受験生たちに聞くと、問2、3が「ムズカシカッタ💦」との感想でした。

 

問2

「曖昧に笑いながら」とありますが、なぜ希代子は「曖昧に笑」ったのですか。希代子の気持ちにふれながら説明しなさい。

 

さて、心情を読み取る問題です。ただ、本来の心情語「笑う」とは相反する心情が隠れています。その矛盾を「希代子の気持ちにふれながら」読み取り、説明しなければならない問題でした。「希代子の気持ちにふれながら」をどう表現するかもなかなか骨のある課題だと思います。

 

問3

「しゃべいrかけてくる朱里の柔らかそうな頬や、屋上で投げ出された白い脚のすべてが疑わしくなる」とはどういうことですか。説明しなさい。

 

心情をたとえる「柔らかそうな頬」「投げ出された白い脚」が、希代子のどんな気持ちの比喩として使われているのかを考えなければなりません。そして、どうしてそれらが疑わしくなるのか、その理由を説明する問題でした。

 

 

家庭での対策、体験しておきたいこと!

 

「女性地位向上」「男女の区別なく…」そんな社会を実現しようとしています。
そのために、まずはお互いの「違い」を知ること。それが理解への第一歩でもあると、学校側も感じているからこそ、だから入試問題にこのようなテーマの素材文が取り上げられるのだと思うのです。

そうであれば、家庭教育においても必要なことなのではないか、と思っています。

 

ただ、12歳の男の子に「女の子の気持ちや自分との考え方の違いを考えてみよう」なんて声をかけても興味を持ってもらえそうもありません。

 

過去問を通して体験する方法もありますが、文章を読む際には「過去の体験がないとイメージは引き出せない」よって「やる気にスイッチはオフのまま」になってしまいます。

そこで低学年のころから日常で工夫をしています。たとえば、「映画」や「書籍」「日常、目にするできごと」を通して、「男の子の気持ち体験」「女子の気持ち体験」を試みるなどですね。

2023年受験にて開成中に合格した生徒たちも同じような体験を重ねてきました。上記の体験を通して得た情報から、自分の考えを整理し、設問にそって相手に伝わる記述ができるようにする「仕上げ」として過去問演習を活用しました。

 

次回は筑駒故国出典から、家庭でできる工夫をご紹介したいと思います。