走って下さい!(あとがきにかえて)
月日の流れるのは、じつに早いもので、私もこの世に生まれ出て、20年と半年が過ぎていきました。たくさんの出逢いと別離を繰り返しながら。
立ち止まり、振り返ってみれば、ささやかながら、私の歩いてきた道があります。決して真っすぐではないけれど。
まだまだ長い人生ーーー思いきり、生きたいのです。
社会人として扱われるようになってから、三年以上たちました。
未知の世界でのできごとは、私を驚かせました。毎日が“あっ”というまに過ぎてしまって。でも、このごろ、その驚きに少し慣れてきてしまった自分を、自分の中に見つけることがあるのです。
『雨よ流して』のレコーディングで、涙を流したことを忘れたわけではないのに。
“初心忘るべからず”という言葉、とても好きです。
私は、一人で歩いてきたのではないのです。事務所の人、レコード会社の人、ラジオ局の人・・・・・・まだまだ他にもたくさんの人たちによって、私はここまでこれたのです。
感謝の気持ちを、忘れたくはありません。
私の小さな舟は、これからどこまで流れていくのでしょうか。
〈もう、ここまできたのだから、引き返そうか・・・・・・〉
大きな波が押し寄せてくるたびに、心の隅で、そんなことをつぶやいたこともあったっけ。でも、今は違うのです。いける所まで、とにかくいってみようと思うのです。
コンサート、ラジオのDJ、曲作り・・・・・・どれをとってみても、未熟なものばかりだけれど、あせらないで、少しづつ、自分のものを捜していきたいなァと思っています。
小さいころから、国語の嫌いだった私。作文や感想文、とにかく、文字を書くことが大の苦手だった私。学校でレポートを書くことすら、容易なことではなかったのに。
人の運命とは、とても不思議なもので、そんな私が、こうして自分の本を出そうと、原稿用紙に信じられないほど、たくさんの文字を書き連ねています。
一生のうち、本を出せるチャンスなど、そうそうあるものではない。そう思って、思いつくままにだけども、一生懸命に書きました。ワニブックスのみなさま、お世話になりました。そして、この本を読んでくださっているあなたに、言いたいのです。
『どうもありがとう』
これからも、いろいろな人たちの力を借りて、私は私の道をいくでしょう。
同じ季節(とき)を、あなたもあなたの道で、走って下さい!!
1982年9月
沢田聖子
オマケ
今週の一般公開は
『いなづま』


