日時: 2024年3月23日(土)
場所: 新国立劇場オペラパレス
指揮: 大野和士
演出: デイヴィッド・マクヴィカー
演奏: 東京都交響楽団
合唱: 新国立劇場合唱団

トリスタン:ゾルターン・ニャリ
イゾルデ:リエネ・キンチャ
マルケ王:ヴィルヘルム・シュヴィングハマー
クルヴェナール:エギルス・シリンス
メロート:秋谷直之
ブランゲーネ:藤村実穂子
牧童:青地英幸
舵取り:駒田敏章
若い船乗りの声:村上公太


『トリスタンとイゾルデ』は私の初体験オペラであり、最も好きなオペラのひとつ、大変思い入れのあるオペラです。

大野和士さん指揮するオーケストラは、よく統制され引き締まり、緻密で雄弁、充実して惹き込まれます。
豊潤で柔らかく、陰翳に富み、禁断の愛の心理劇を奏でています。
特に、第二幕の「愛の二重唱」("夜の帳よ、下り来い"より)、ブランゲーネの「見張りの歌」での豊麗で夢幻的な響きが感動的。
全曲中、最も甘美で官能的な音楽、<まどろみの動機><死の動機>、肉体は滅びても愛は不滅だと歌い上げます。
<愛の死の動機>が姿を現す…情感に満ちて、心は揺さぶられ、涙が溢れてきます。
そして、カタストロフィへ突き進んでいくトリスタンとイゾルデ。
第三幕前奏曲、深い苦悩に満ちた重苦しい音楽の中で、チェロの響き、牧童が吹くとされるイングリッシュ・ホルンの響きが印象的。
そして、「愛の死」、前奏曲冒頭の<憧れの動機>が再び現れ、永遠に満たされぬ憧れをはらんだまま、消えていきます。
陶酔感たっぷりの音楽です。

近年、硬くなりつつある涙腺も緩み、涙が溢れてきます。
この音楽には、心が揺さぶられ魂がゆすぶられる…陶然となる魅力、抗えない"魔力"があります。

(冒頭、前奏曲はゆっくりたっぷり、うねりながら聴かせます。
第一幕85分、第二幕70分、第三幕80分
第二幕の「昼の対話」の後半部、"昼"と"夜"が交錯する部分はカットされていたのかな。)


トリスタン役のゾルターン・ニャリは、柔らかく哀愁漂い憂いのある美声で、充実した歌唱力です。
演劇を学び、俳優だったとのこと、表現力・演技力は抜群。
表情、身振り手振り、腕から手・指先までの動きは、心情を物語っています。
第三幕での瀕死状態での長いモノローグは、迫真の歌唱と演技で存在感を発揮、魅せられ感動的です。
やや線が細く気品のある騎士、英雄的な力強さにはやや欠ける印象。
ヘルデンテノールとは言い難いものの、この様な繊細なトリスタンも"あり"でしょう。

イゾルデ役のリエネ・キンチャは、凛とした清澄なきれいな声質、よく通る豊かな声量、手堅い歌唱力です。
が、時折、高音がキンキンするのが難点。
くすんだ声になることもあり、発声になどにやや癖があるでしょうか。
ドイツ語の発音が不明瞭との指摘を見かけましたが、私自身、ドイツ語を解さないので、何とも言えませんが。
気高い姫、気高さゆえに本心を素直に表せなかったが、媚薬の力(切っ掛けは何でもよかったと思うが…)によって解き放たれ、
愛の陶酔の果てに、死の世界に誘われていく…。
複雑な心情表現が必要な役柄、よく歌っていますが、更なる表現力が欲しいところでしょうか。

ブランゲーネ役の藤村実穂子は、深く瑞々しい艶のある美声、見事な歌唱力と表現力で圧巻!!
女主人イゾルデに控えめながら献身的に尽くす侍女、「見張りの歌」がとりわけ美しく惹き込まれます。

マルケ王役のヴィルヘルム・シュヴィングハマーは、深くハリのある豊潤な低音美声、説得力のある充実した歌唱力と表現力です。
王としての風格と貫禄があり、裏切られた痛切な悲嘆、苦悩、抑えた怒りを朗々と歌い語り、存在感があります。

クルヴェナール役のエギルス・シリンスは、力強くハリのあるバリトン美声、いつもながら充実した歌唱力と表現力。
トリスタンへの忠義に篤い、無骨者を好演。

メロート役の秋谷直之さん、牧童役の青地英幸さん、舵取り役の駒田敏章さん、船乗りの声の村上公太さん、皆さま手堅い歌唱です。
新国立劇場合唱団による合唱も、いつもながら手堅い。


デイヴィッド・マクヴィカーによる演出は、台本に忠実でオーソドックスなもの。

全幕通して、照明が効果的に使用されて、印象的です。
冒頭、前奏曲が演奏されている間に、舞台左側から右上に向かい大きな白い月(太陽?)が昇り、
第一幕は、右上に留まったまま舞台は進行、後半に行くにつれて赤くなります。
第二幕は、月は無く、舞台中央に抽象的なオブジェ。
最初は白く照らされていますが、「愛の二重唱」が高まるにつれ、青くなります。
マルケ王一行の登場により、一瞬で明るくなります。
第三幕は、赤い月(太陽?)は舞台左上にあり、途中一旦白くなりますが、再度赤くなり、
「愛の死」でイゾルデが舞台奥に消えていくのに合わせて、赤くなり右手下に沈んでいきます。
大きな円形のもの、第一幕と第三幕は昼間なので、"太陽"のような気もしますが、
(初演の時の日記によると、私は"太陽"と捉えていた…)
逆説的に敢えて"月"なのか…"夜の世界"、"闇"と"死"に憧れる、心象風景なのでしょうか。

イゾルデの衣裳は、白、黒、赤と、各幕で変わります。
第三幕では、赤いドレスに黒いマントを羽織って登場しますが、マントを脱ぐといつの間にか、ドレスと同色の赤いトレーンとなります。
トリスタンは黒、マルケ王は白、ブランゲーネはグレー。

このプロダクションの初演は2010年で、二度目の上演であり、私は二度目の鑑賞。
初演時の感想では全く触れていないのですが、
SNSで不評意見の多い水夫やマルケ王の家来たちのよるダンスについて、音楽の邪魔はしていないので、私的には有っても無くてもどちらでもよい。


オーケストラ、歌手陣(特に脇役)、演出ともに、バランスがよく素晴らしい舞台です。


    

写真左:第一幕
写真中:第二幕
写真右:第三幕

  

アンコール、舞台裏にて

 

(写真は公式Xより)



タイトルロールについて、豪華だと喜んでいた当初の予定はトルステン・ケールとエヴァ=マリア・ヴェストブルック。
二人とも配役変更となったことが、とても残念です。
出演されたお二人はよく健闘していると思うものの、物足りなさは否めません。

前述の通り、とても思い入れのあるオペラ、過去3回の鑑賞ですが豪華な配役ばかりだったもので…。
 ベルリン・ドイツ・オペラ(1993)  ジリ・コート指揮、ルネ・コロ* & ジャニス・マルティン
 ベルリン国立歌劇場(2007) バレンボイム*指揮、クリスティアン・フランツ & ワルトラウト・マイヤー* & ルネ・パーペ*
 新国立劇場(2010) 大野和士指揮、ステファン・グールド* & イレーネ・テオリン*
(うぅぅ、グールドの逝去が、未だに悲しくて悲しくて…(ToT) (ToT))
(*:特に感銘を受けた指揮者と歌手)



この3/23、世界的ピアニスト、イタリア出身のマウリツィオ・ポリーニが82歳で逝去。
1942年1月ミラノ生まれ。60年にショパン国際ピアノコンクールで優勝して、音楽家としての名声を高めました。
ミラノ・スカラ座は声明で「現代の偉大な芸術家の一人で、劇場にとっての模範だった」と死を悼んでいます。
遺体はポリーニが最も愛したスカラ座に安置されるとのこと。

CDはいくつか持っていますが、私が生演奏に接したのは2018年来日公演の1回だけ。
またも偉大なる音楽家が他界しました。(ToT) (ToT) (ToT)
心からご冥福をお祈りいたします。




無事に、"トリスタン祭"の第一弾が終了。

この日のために、無理はしない程度に、多少の鞭は打ちながらリハビリをしてきました。
まだ復活とは言い難いものの、少しずつ外出の自信もついてきました。

これから、"トリスタン祭"の第二弾を皮切りに、私の「東京春祭」が開幕します。
楽しみ、楽しみ!!










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この年齢になると、先日の不明熱に限らず、様々な身体のトラブルが出てくる。

視力について、日常生活では裸眼でそれほど困ることはない。
リビングにあるテレビ(主にニュース)を食卓から見る時には、字幕表示がよく見えない(読めない)ことが増えてきているが…。
オペラ音楽鑑賞・歌舞伎観劇・美術鑑賞など、道楽の時には近視用眼鏡を使用。
新聞や最近購入した本は裸眼で読めるのが、数年前からモノによっては遠視用眼鏡を使用。(老眼が始まった!!)

飛蚊症の症状は、以前から出ていて、何度か眼底検査をしている。
初めて行ったのは20年近く前だったか…あまり気にしなくてよいとのことで、放置状態。
(白い壁の上を、たまに黒い点が蚊のように飛んでいく程度…)

数日前の昼間、日常生活の中で、突然、左目のい黒い大きな蜘蛛や黒い糸屑の塊が見えてビックリ!!げっそりげっそりげっそり
10分程度で消えたものの、夜、後片付けをしている最中に、左側で(架空の)黒い大きな虫が走り去り、ギャアーと悲鳴を上げる。げっそりげっそり
(そもそも、昆虫の類はとても苦手なのだ。あせあせ(飛び散る汗)
そして、左目の眼球に痛みがあり、違和感がある。

以前に眼科でもらった飛蚊症についての冊子を読み、
まさか網膜裂孔や網膜剥離の前兆ではないかと、恐怖に慄く。げっそり[m:246げっそり

翌日は祝日、翌々日は木曜日で休診日。
突然の体調不良・悪化の時、何故かいつも、直ぐに病院に行けない曜日巡りになるのよね。がまん顔涙

黒い大きな蜘蛛や虫、糸屑の塊が見えたのはこの日だけだったが、
翌日も翌々日もグレーの蜘蛛が細い糸を張ったり、髪の毛が掛かっていたり、無色の水玉のフィルターがある気がする。

漸く、金曜日に予約なしの飛び込みで、掛かり付けの眼科クリニックへ行く。
(通常はドライアイとアレルギーの痒み・痛み)
眼底検査を行い、"網膜は異常はなし"と診断される。
(眼圧は正常、視力も前回よりも良いとの判定…フィルターは掛かったままだったが…)

問題なしで一安心なのですが、何か気持ち悪い。。。

黒い物体がずっと居座っている、暗い場所でも見える時には注意が必要だが、
今のところ病的なものではないので、あまり気にし過ぎないようにとのこと。

グレーの蜘蛛が見えることは減ったものの、
無色の水玉フィルターは明るい所では、しばしば出現する。
オペラ鑑賞のこの日、開演前にも出現したのだが、会場が暗くなると消えた。
今、PC操作している時にも、現れている。
左目には、やはり少々痛みや違和感がある。
困ったものだ。


嫌だね!!
歳は取りたくないね!!!