日時: 2022年4月16日(日) 15:00より
場所: 東京文化会館
指揮: フレデリック・シャスラン
演奏: 読売日本交響楽団
合唱: 東京オペラシンガーズ
児童合唱: 東京少年少女合唱隊

トスカ:クラッシミラ・ストヤノヴァ
カヴァラドッシ:イヴァン・マグリ
スカルピア:ブリン・ターフェル
アンジェロッティ:甲斐栄次郎
堂守:志村文彦
スポレッタ:工藤翔陽
シャルローネ:駒田敏章
看守:小田川哲也
羊飼い:東京少年少女合唱隊メンバー


フレデリック・シャスラン指揮するオーケストラは、キレがあり色彩鮮やか、濃厚で雄弁です。
歌手に寄り添い、歌心たっぷり、きめ細やかでドラマチック、甘く官能的な情感と緊迫感に満ちた演奏です。
ヴィオラとチェロの音色にうっとり。

スカルピア役のブリン・ターフェルが素晴らしい!!
深くハリと艶のある豊潤な美声で、凄みたっぷり迫力満点、圧倒的な歌唱力・表現力・演技力です。
まさに”悪の華”、邪悪な敵役ながら、高貴な気品も漂い魅力的。
デ・テウムが分厚く荘厳に響く中で、欲望の高揚感を表現、最後に十字を切る様はインパクトがあります。

ブリン・ターフェルは、初めて聴いた2001年バイエルン国立歌劇場『フィガロの結婚』で好印象を受け、その後、WOWOWでMETライブヴューイング『ニーベルングの指環』のヴォータンを聞いています。
良い声で好きな歌手なのですが、明るい声色のバリトンと印象でした。
2019年の東京春祭『さまよえるオランダ人』では、また少し違う印象を持ちました。
今回、ここまで凄みを効かせて”悪の華”を歌いきるとは…これぞ、声の成熟、歌手の成長なのでしょう。

トスカ役のクラッシミラ・ストヤノヴァは、艶と潤い、そして芯のある澄んだ美声。
力強く情熱的でよく通る声質、弱音から強音、低音から高音を巧みにコントロールした抜群の歌唱を披露。
気が強いものの優美で気品はある、表情豊かで細やかな感情表現・演技も見事です。
代役のマグリに寄り添い、演技の面でよく支え、二人の愛情の深さを表現しています。

カヴァラドッシ役のイヴァン・マグリは、柔らかく伸びやかで艶のある美声、充実した歌唱力・表現力です。
急な代役のため譜面を持っての登場ですが、出来るだけ演技しようと努めているのが好印象。

アンジェロッティ役の甲斐栄次郎さんは、ハリのあるノーブルな歌唱。
堂守役の志村文彦さんは、コミカルさを漂わせつつ堂々とした歌唱。
その他、日本人歌手も手堅い歌唱です。

合唱は、スケール感があり充実。
少年少女合唱は、踊りながら登場、可愛らしいこと。
羊飼いの少女のソロは、よく通る純真な声色でお見事です。


第二幕のスカルピア、第三幕のカヴァラドッシ、殺害された後は舞台上で後ろ向きになります。
幕切れ、トスカは前を向いたまま頭を垂らして顔を伏せ、飛び降りたことを表現。
トスカは緑色のドレス。
男性陣は黒スーツあるいはタキシードに白シャツですが、スカルピアは黒シャツ、特異な人物であることを表しているのでしょうか。

照明による最小限の演出も好感を持てます。
第一幕の聖アンドレア・デッラ・ヴァッレ教会は白色、第二幕のファルネーゼ宮殿のスカルピアの執務室は紫色と橙色、第三幕の聖アンジェロ城の屋上は空色。
物語の進行によって、明度・彩度を微妙に変化させています。



  

 

  

 



(写真は東京春祭公式Twitterより)


そうそう、『トスカ』は今回が4回目ですが、初めて鑑賞したのは1997年のメトロポリタン歌劇場来日公演。
カヴァラドッシは今は亡きルチアーノ・パヴァロッティだったのですが、既に全盛期を過ぎて期待したほどのことはなく少々残念な印象…(^^;;(^^;;
スカルピアを歌ったジェームズ・モリスに魅せられたのでした。
やはり、スカルピアは敵役ながら、主役を喰ってしまうある意味美味しい役所なのですね。(^^ゞ
トスカを歌ったマリア・グレギーナも素晴らしいものでした。



今年の東京春音楽祭では、ムーティの『仮面舞踏会』、ヤノフスキ指揮・N響『マイスタージンガー』、そして今回のシャスラン指揮・読響『トスカ』を楽しませていただきました。
どの公演も素晴らしい演奏で、満足です。
指揮者と主要歌手は外国人とはいえ、国内オーケストラでこれだけの演奏を聴けるとは、嬉しい限りです。
来年以降も、これらの企画に期待しています。



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高揚感でいっぱい幸せ気分で帰路についたのですが、
電車の中で、市川左團次さんの訃報を知り、ショック!!!
悲しさと寂しさに暮れたのでした。(ToT)(ToT)(ToT)