リヒャルト・シュトラウス コンサート・オペラ 第1弾

日時: 2022年11月18日(金) 19:00より
場所: ミューザ川崎シンフォニーホール
指揮: ジョナサン・ノット
演奏: 東京交響楽団
演出監修: サー・トーマス・アレン

サロメ: アスミク・グリゴリアン
ヘロデ: ミカエル・ヴェイニウス
ヘロディアス: ターニャ・アリアーネ・バウムガルトナー
ヨカナーン: トマス・トマソン
ナラボート: 岸浪愛学
ヘロディアスの小姓: 杉山由紀
兵士1: 大川博
兵士2: 狩野賢一
ナザレ人1: 大川博
ナザレ人2: 岸浪愛学
カッパドキア人: 髙田智士
ユダヤ人1: 升島唯博
ユダヤ人2: 吉田連
ユダヤ人3: 高柳圭
ユダヤ人4: 新津耕平
ユダヤ人5: 松井永太郎
奴隷: 渡邊 仁美


19世紀末の耽美的・頽廃的な世界観を表した、オスカー・ワイルドによる『新約聖書』の一挿入話を基にした戯曲が原作。
R.シュトラウスの官能的で極彩色の音楽が魅力的です。

ジョナサン・ノット指揮するオーケストラは、濃厚で緻密、キレのある充実した演奏です。
弛緩することなく終始、緊張感・緊迫感たっぷり、豊潤な響きに惹き込まれ、あっという間の100分です。

アスミク・グリゴリアンのサロメは、透明感のある輝かしい美声、圧巻の歌唱力と表現力です。
清澄で瑞々しく繊細な歌声ですが、オーケストラの大音量を突き抜ける鋭さがあります。
ヨカナーンの首を抱いてのモノローグは、妖しく美しく切なく痛々しい。
誇り高き少女の無邪気さ・我儘、残酷さ、倒錯と狂気、そして妖艶さが感じられます。
素晴らしいパフォーマンス、その歌唱と見目麗しい姿に、耳も目も釘付けです。

ミカエル・ヴェイニウスのヘロデは、力強く威厳のある美声、充実した歌唱力・表現力・演技力で、存在感があります。
俗物感たっぷりのキャラクター・テノール的な役柄ですが、副王としての貫禄が感じられます。

ターニャ・アリアーネ・バウムガルトナーのヘロディアスは、傲慢で嫉妬深い王妃ですが、気高く芯のある美声。
出番は少ないものの、存在感のある歌唱です。

トマス・トマソンのヨカナーンは、深くハリのある朗々とした低音美声で、見事な歌唱力・表現力です。
予言者としての堂々とした厳かな佇まい、風格があります。
井戸の中での歌唱は2階パイプオルガンの脇の上手にて、サロメとの対面は舞台下手から登場します。

外国人歌手は皆様、とても素晴らしい。
来日して下さり、ありがとうございます。

日本人歌手陣は、手堅く健闘しているのですが、残念ながらオーケストラの音量に負けている印象。(^^;;
直前に、ナラボート役を含め3名が体調不良で降板となり、急遽の兼任しながらの代役。
序盤、サロメの相手役としてのナラボートを物足りなく思ってしまいましたが(^^;;、仕方ありません。
兵士1とナザレ人1役の大川博さん、よく伸びる低音が好い。

制限された中での、必要最小限の演出・演技が効果的。
舞台セットはなく、ステージには椅子が数脚置かれています。
場によって登場人物が入れ替わり立ち替わり、全員暗譜です。
「7つのヴェールの踊り」は、歌手は全員退場してオーケストラが主役、絢爛豪華、魅惑的な音楽をたっぷり聴かせます。
ヨカナーンの首が落ちる件、弦楽器奏者が床を「ドン!」と踏みならして、表現しています。
幕切れ、「あの女を殺せ!」というヘロデによる叫びの後、歌手は皆退場、そして終曲。

衣装は黒が基調。(ヘロディアスのみ青色ドレス。)
5人のユダヤ人は、黒色スーツに色違いのネクタイをして、順番に前に出て歌うという演出。
サロメは黒色ドレスで、もっと華やかな色のドレスを着ればいいのに…と思っていたのですが、
ヨカナーンの首として運ばれたものは真紅色の布を巻いたもの。
それを抱き、掲げ、布を広げて肩に纏います。
黒に赤が際立ち効果的!!なるほど!!


大変充実した期待以上の演奏会、心地よい疲労感と満足感でいっぱいです!!


ジョナサン・ノットと東響によるR.シュトラウスのオペラシリーズは、今後も続くとのこと。
来年の第2弾は『エレクトラ』、未体験のオペラなのでとても楽しみ。
暗く凄惨な復讐劇で、『サロメ』を上回る急進的な音楽とのことですが…。(^^;;(^^;;



(写真はTwitterミューザ公式より)