レーダー照射された自衛隊機は何をしていたか | 詩はどこにあるか

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 中国軍機が自衛隊機にレーダー照射した問題。疑問は、レーダー照射された自衛隊機が、31分間何をしていたか、につきる。
 レーダー照射され、①逃走中だったのか。(中国軍機が追跡していたのか。)それとも、②「訓練中で危険だから近づくな」という中国側からの注意を無視して、中国軍の訓練を偵察し続けたのか。あるいは③中国軍機が日本領空内に侵入しないように、警告し、日本領空内から中国軍機が遠ざかるまで追跡していたのか。
 これは、小泉が、自衛隊機の飛行ルートを公開すれば、すぐ明らかになることだろう。もし、①逃走していたのに、中国軍機が追跡し、レーダー照射を継続していたのなら、小泉は、そう公表するだろう。「中国軍機にレーダー照射されながら、自衛隊機は31分間追跡された」と言うだろう。それは、どうみても「訓練」を逸脱した行為である。そう非難しないのは、事実が、それと違うからだろう。
 ②は可能性として、いちばん高い。中国軍の訓練を偵察するのも、自衛隊の任務のひとつだろう。パイロットは、独自の判断でそうしたのか、上司の命令でそうしたのかわからないが、職務遂行に熱心な隊員だということができる。
 ③も可能性が低い。もし訓練中の中国軍機が自衛隊機に追跡されたのなら、中国はそのことを公表するはずである。訓練中と通告していたのに、追跡された、と明確に言うはずである。

 ②に関して、いろいろ思うことを書いておきたい。
 小泉(高市)支持派は「レーダー照射されることは、こめかみに銃をつきつけられるようにこわい」というようなことを書いていたが、実際に、こわかったら人間はどう行動するだろう。「逃げる」のではないか。先に書いたように、どう見ても逃げていない。中国軍機に追跡されていない。
 だから、自衛隊のパイロットは、恐怖よりも、ほかのことを考えていたと思う。
 だいたい、自衛隊機は、中国軍機が日本領空に近づいてきたから緊急発進したのではない。自衛隊機は「日本領空に侵犯するな」と警告していない。もし警告していたのなら、そのことを小泉が言うはずである。
 もし緊急発進、スクランブルだったのなら、それはそれで「レーダー照射されることは、こめかみに銃をつきつけられるようにこわい」と言っている場合ではない。こわくても、きちんと中国軍機に警告するのが自衛隊員の「任務」だろう。それがいやなら、自衛隊員にならなければいい。
 自衛隊員は、何を考えていたのか。「任務」の遂行を考えていたのだろう。そして、その場合、その「任務」は自衛隊員の自発的な意思だったのか、あるいは上司の命令だったのかが問題になる。上司は、もしかすると「執拗に訓練空域を飛行し続けると、中国軍機はレーダー照射をしてくるかもしれない。レーダー照射された公表すれば、中国が非難されるはずだ。中国を非難するためには、レーダー照射されることが必要だ。レーダー照射されるまで、偵察をつづけろ」と言ったかもしれない。自発的にしろ、命令にしろ、そのパイロットは「忠実」な隊員だったことになる。レーダー照射されても恐怖を覚えない、覚悟のできた隊員だったことになる。
 31分「偵察」して、何らかの「収穫」を得たと判断したから、自衛隊機は「引き揚げた」のだろう。そうでなければ、自衛隊機は、中国軍の訓練が終わるまで(中国軍が引き揚げるまで)、偵察をつづけただろう。一機か、交代しながら複数機でかはしらないが。

 何が真実なのかは、小泉が、自衛隊機の飛行ルートを公開すれば、すぐ明らかにする。公開できないのは、そこに「隠したいこと」があるからである。
 それは、たとえば、「日本の偵察能力の低さ」を明らかにするかもしれない。日本は、訓練空域にまで自衛隊機を飛ばさないと、中国軍がどんな活動をしているか把握する能力がない、ということを証明することになる。いまは、いろいろ衛星が地球をまわっている。その衛星を活用して、中国軍の動きを把握する能力を持たないということを、中国に知らせてしまうことになる。

 私が気にかかるのは、自衛隊の、あるいは日本の防衛のための技術(武力)、自衛隊員の士気ではない。
 小泉の「真実」を言わない姿勢、「事実」を明らかにしようとしない姿勢である。
 国民に真実を教えないで、国が守れるのか。
 第二次世界大戦のときは、どうだったか。「敗北」を「転戦」と言い換えるような嘘をついていなかったか。
 指揮系統の嘘のために犠牲になるのは、国民である。中国ではない。嘘つき指揮官に指揮されるとき、どんな軍隊も敗北する。
 高市(小泉)支持派は、そのことを考えるべきである。