池井昌樹『理科系の路地まで』(4)(思潮社、1977年10月14日発行)
「祭りのにおい」。タイトルに「におい」が登場する。
ゆっくりとあずきのにおい
かびくさい歴史のにおうへや
「ゆっくり」が池井らしい。「におい」はいつでも「ゆっくり」している。ゆっくりと池井をつつむということだろう。それは、ゆっくりと池井を「歴史(過去)」へ誘う。池井をひっぱるのは「未来」ではなく「過去の時間」である。「ひとの歴史」である。それは、楽しいだけではない。
祭りは
古い歴史の不気味さおそろしさ楽しさが
一度にやって来たような感じ
「不気味さおそろしさ楽しさ」と三つの名詞が句点も接続しもなく強固に連続している。文字なのでひとつひとつ書くしかないのだが、その三つは池井のなかで分離できない形で融合しているのだと思う。「におい」のように。「一度にやってきた」の「一度に」が、そのことを端的にあらわしている。
「ネオン」の書き出し。
いなかの町は 夜の町
よいにおいがする
りんごのにおいか
さくらんぼのにおいか
つるりと光る
まるい貯金箱を思い出す
よいにおいがする
「貯金箱」にさえ、においがある。そのにおいは「まるい」。
「われいさんの市」というのは、「祭り」のひとつか。
青い中に巻き込まれた人が
冷たい刀でころされる
われいさんの市は いんきな月夜
「青い中」の「青」が透明である。谷内六郎の青が、この詩のなかに隠れているかもしれない。
蛸焼きのソース
薄荷パイプ
バクダンキャンデー
「におい」ということばはないが、やはりここにも、においがある。
**********************************************************************
★「詩はどこにあるか」オンライン講座★
メール、googlemeetを使っての「現代詩オンライン講座」です。
メール(宛て先=yachisyuso@gmail.com)で作品を送ってください。
詩への感想、推敲のヒントをメール、ネット会議でお伝えします。
★メール講座★
随時受け付け。
料金は1篇(40字×20行以内、1000円)
(20行を超える場合は、40行まで2000円、60行まで3000円、20行ごとに1000円追加)
1週間以内に、講評を返信します。
講評後の、質問などのやりとりは、1回につき500円。
★ネット会議講座(googlemeetかskype使用)★
随時受け付け。ただし、予約制。
1回30分、1000円。(長い詩の場合は60分まで延長、2000円)
メール送信の際、対話希望日、希望時間をお書きください。折り返し、対話可能日をお知らせします。
費用は月末に 1か月分を指定口座(返信の際、お知らせします)に振り込んでください。
作品は、A判サイズのワード文書でお送りください。
お申し込み・問い合わせは、
yachisyuso@gmail.com
また朝日カルチャーセンター福岡でも、講座を開いています。
毎月第1、第3月曜日13時-14時30分。
〒812-0011 福岡県福岡市博多区博多駅前2-1-1
電話 092-431-7751 / FAX 092-412-8571
*
オンデマンドで以下の本を発売中です。
(1)詩集『誤読』100ページ。1500円(送料別)
嵯峨信之の詩集『時刻表』を批評するという形式で詩を書いています。
https://www.seichoku.com/user_data/booksale.php?id=168072512
(2)評論『中井久夫訳「カヴァフィス全詩集」を読む』396ページ。2500円(送料別)
読売文学賞(翻訳)受賞の中井の訳の魅力を、全編にわたって紹介。
https://www.seichoku.com/user_data/booksale.php?id=168073009
(3)評論『高橋睦郎「つい昨日のこと」を読む』314ページ。2500円(送料別)
2018年の話題の詩集の全編を批評しています。
https://www.seichoku.com/user_data/booksale.php?id=168074804
(4)評論『ことばと沈黙、沈黙と音楽』190ページ。2000円(送料別)
『聴くと聞こえる』についての批評をまとめたものです。
https://www.seichoku.com/user_data/booksale.php?id=168073455
(5)評論『天皇の悲鳴』72ページ。1000円(送料別)
2016年の「象徴としての務め」メッセージにこめられた天皇の真意と、安倍政権の攻防を描く。
https://www.seichoku.com/user_data/booksale.php?id=168072977
問い合わせ先 yachisyuso@gmail.com