破棄された詩のための注釈24 | 詩はどこにあるか

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破棄された詩のための注釈24
                        谷内修三2020年10月12日

 未来はすでにできあがっていて、その動かしがたさが、現在を無力にしている。できるのは過去を思い出すことだけだった。

 通り抜けた秘密は、踏みつけたガラスのように割れたまま、壁の絵や窓から見える半壊の雲を映していた。テーブルの上の小さな写真を、空っぽの引き出しの奥に隠した。

 「私はここにいないと言うために、私はここにいる」と忘れていた音楽が歌い始めた。女の、古くて、新しい、擦れた声が。