破棄された詩のための注釈22 | 詩はどこにあるか

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破棄された詩のための注釈22
                        谷内修三2020年09月25日

 絵のなかの、座っていた男が、絵の外へ出て行った。「時間になってしまった」ということばと、椅子が残った。
 椅子は、みんな家へ帰っていく、と絵の外の世界を思った。通りにはすでに街灯がついているだろう。下を通りすぎると、ふいに、影が自分を追い越していくのを目撃してしまう。あの気分だな。座るひとを失った椅子は考えた。
 「何を考えている?」
 絵のなかの、開いた窓が聞いてきた。椅子は考えたことを隠すためのことばを探したがみつからなかった。