破棄された詩のための注釈17 | 詩はどこにあるか

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破棄された詩のための注釈17
                        谷内修三2020年09月02日

 明け方、木は、木になる前に黒い影としてあらわれる。静かに夜を脱ぎながら、裸の上に幹の色と葉の色をまとい始める。その動きは、いったい何にしたがっているのか。
 「人間ならば、仕事と過去、生活と過去、好みと性格。」
 芝居が終わる寸前になって舞台にあらわれた役者は、逆光のなかで、そのセリフだけを発声する。
 年も、性も、住んでいる街も違う肉体と一本の木をつなぐ、何を見つけてきたのか。その声はただまっすぐに観客の上を渡っていく。