自民党憲法改正草案を読む/番外383(情報の読み方)
2020年08月30日の読売新聞(西部版14版)。1面に
適地攻撃 施設に限定/政府検討 移動式発射台 除外
という見出し。
安倍が辞任会見で「迎撃態勢をととのえるだけでは不十分だ」というようなことを言った。そして、そういう認識を共有できたので辞任する、と、北朝鮮を引き合いに出して語ったと記憶している。
その辞任会見での安倍の「遺言」を追認する記事である。こう書いてある。
新たなミサイル防衛での「敵基地攻撃能力」の保有を巡り、政府が、攻撃対象を敵国領域内のミサイルに関連する固定施設に絞る方向で検討していることがわかった。複数の政府関係者が明らかにした。
しかし、「敵基地攻撃」がなぜ「防衛」なのか。「迎撃では不十分」という安倍の会見でのことばにしたがって解釈すれば、これはどうしたって「先制攻撃」だろう。「防衛」を逸脱しているだろう。
政府は固定目標への攻撃について、「敵の誘導弾等の基地をたたくことも憲法が認める自衛の範囲に含まれ可能」としてきた従来の政府見解の範囲内だとしている。
読売新聞は、簡単に「従来の政府見解」だからと追認している。これでいいのか。新聞の役割を果たしているといえるのか。これでは政府の宣伝紙だろう。
さらに、これだけでは、「移動式」を除外する理由がわからない。だいたい「敵国」が日本攻撃のための軍備を「基地」に固定するとは限らないだろう。日本が「固定施設」しか狙わないのだとしたら、すべてを「移動式」にしてしまうだけだろう。そういう疑問を、この記事を書いた記者はもたなかったのか。
いったい、これは、どういうニュースなのだ?
読売新聞は、とてもおもしろい解説を書いている。(番号は、私がつけた。)
①敵基地攻撃を巡っては、人工衛星や偵察機による目標探知、電子戦機による相手レーダーの妨害などの装備体系を整えなければならないとの指摘がある。特に、TEL(移動式ミサイル発射台)の位置把握には、新たな衛星や無人偵察機など、より能力の高い装備品が必要となるとみられていた。
②政府は、敵基地攻撃に必要なこれらの装備品全てを独自に保有することはせず、限定的な攻撃能力の保有にとどめる方針だ。日米同盟内での連携を重視し、主要な打撃力を米国に依存する役割分担も維持する。
③こうした方針により、敵基地攻撃能力に慎重な公明党の理解を得やすくする狙いがあるとみられる。首相は辞意を示した28日の記者会見で、「今後速やかに与党調整に入り、その具体化を進める」と述べ、改めて実現に意欲を示した。
①は「移動式施設」は攻撃がしにくい。②もし、それを実現しようとすると金がかかるので、アメリカにまかせる。そして③大半はアメリカにまかせるということを明確にすることで公明党の「理解を得る」。
なんだか、「ご都合主義」というか、この論理でアメリカも公明党も納得するのか。アメリカは武器さえ売れれば、それで満足だろうけれど。
おそらく「政府関係者」が「リーク」したままに、そっくり一字一句「コピー」しているのだろう。
批判の視点が完全に欠如しているから、コピーでおわっても気にならないのだ。
なぜか。
「日本の防衛」を安倍の「レガシー」にしたいからである。安倍は「戦争法案」によって平和憲法を踏みにじったのだが、読売新聞はそれを逆に言おうとしている。安倍は日本の安全を考えていた。そういいたいのだ。
そのために、わざわざ「安倍の意欲」を強調している。辞任を伝える新聞では、そのことを書いていなかったにもかかわらず、である。
「防衛」「憲法」に関する「負の問題」を点検せず、安倍がやろうとしていたことだけを今後の方針として提出する形で、安倍を評価する。読売新聞の「安倍忖度」は、こういう形で引き継がれ、次期政権でも「忖度記事」を書き続けるのだろう。
(他紙を見ていないのでわからないのだが、おそらく読売新聞の「特ダネ」だろう。そして、「特ダネ」というのは、たいていが「リーク」なのだ、ということがとてもよくわかる記事だといえる。「特ダネ」は政府宣伝であり、政府に協力することで次の「見せ掛けの特ダネ/リーク記事」を「おねだり」しているのだろう。)
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「情報の読み方」は9月1日から、notoに移行します。
https://note.com/yachi_shuso1953
でお読みください。
#安倍を許さない #憲法改正 #天皇退位
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