嵯峨信之『詩集未収録詩篇』を読む(98) | 詩はどこにあるか

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* (何も見ているわけではない)

ただ遠くのざわめきに耳を傾けているのだ
やがてそれも静まるだろう

 見ているのは「遠くのざわめき」。それは「耳を傾ける」ような性質のものではないだろう。ふつうは、ぼんやりと聞く。そして、ぼんやりと聞くから、「音」(声)は聞き取れず、ただひとの動きが見えるものだろう。
 このちぐはぐなことばの展開は、「やがてそれも静まるだろう」につづいていく。「静まる」ことを期待しているのか、「静まる」ことを残念に思っているのか。どちらでもいい、という感じしか伝わって来ない。

ぼくにはまだ関わりのないことだから

 と、この詩は閉じられるが、「まだ」ということばに、この詩の嫌な感じが凝縮している。




*

詩集『誤読』は、嵯峨信之の詩集『時刻表』を批評するという形式で書いたものです。
オンデマンドで販売しています。100ページ。1500円(送料250円)
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