破棄された詩のための注釈09 | 詩はどこにあるか

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破棄された詩のための注釈09
             谷内修三2020年08月09日

 雨が降っていたので、いつもより街灯が早く灯った。しかし雨のために、ぼんやりとした光になり、気づくひとは少なかった。車のヘッドライトの方に気がとられているのかもしれない。街灯とヘッドライト、さらにブレーキランプの赤い色が横断歩道の上でにじんだように広がるのは、雨がよほど細かいからだろう。
 その街の名前から注意をそらすために、詩人は強引に「注釈」を書いた。固有名詞を捨て去るためでもあった。六月のおわりのことである。熱い紅茶にミルクを入れて飲んだ。
 ラジオが、九十三分つづくクラシックを流している。どうしてだろう。テーブルの白い皿の上に葉っぱのついたままのラディッシュとチーズがあった。