嵯峨信之『詩集未収録詩篇』を読む(2) | 詩はどこにあるか

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なにからも遠く離れてゐる湖は
それ故にたれのこころにも哀れにより添ひ 諦めすらやさしくつつんでくれる

 「湖」を「詩」と読み替えると嵯峨の姿勢になる。
 詩は、だれかのところへ出掛けてはいかない。詩は、やってくるひとを拒まない。詩のところまでやってくるひとは少ないが、詩は待っている。
 「遠く離れて」、なおかつ「より添ふ」「つつむ」とはそういうことだと思う。「待つ」とは、そういうことだ。
 この「遠く離れて」と「より添ふ」「つつむ」には矛盾がある。ふつうは「遠く離れて」いては、そういうことはできない。だからこそ、その不可能性を突き崩すようにして「哀れ」と「やさしく」が入り込んでくる。そして、詩が完成する。