嵯峨信之『小詩無辺』(1994)を読む(36) | 詩はどこにあるか

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* (蜜蜂の群れがあとからあとから飛び去つていつた)

青空をいくすじもひつ掻いたように
わずかな借金をようやく支払い終わつたのに

 「蜜蜂」は「現実」か、それとも「比喩」か。
 「借金」という生々しいことばが気にかかる。
 「借金」を「現実」だと考えると、「蜜蜂」は「金」を意味しているようにみえてくる。
 「支払い終わつたのに」というのは、たぶん、事実ではない。きょうが期限の借金を支払った。しかし、まだ借金があるということだろう。あるいは、すぐに借金をしなければならないのかもしれない。

 このとき「ぼく」は、どこにいるのだろうか。「ぼく」は「蜜蜂」になって、どこかへ飛び去って行ってしまった、という悲しみが書かれているとも読むことができる。




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詩集『誤読』は、嵯峨信之の詩集『時刻表』を批評するという形式で書いたものです。
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