嵯峨信之『OB抒情歌』(1988)(61) | 詩はどこにあるか

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* (あなたの想うことが湖から吹いてきます)

 この書き出しは「魅惑」に満ちている。「誤読」を誘う。
 「あなたの想うこと」は「あなたが想うこと」、つまり「あなたの想い」か。
 私は、どうしても嵯峨の「あなたへの想い」と読んでしまう。「あなたへの想い」は嵯峨のなかにあるのではない。嵯峨の外にある。それが嵯峨に向かってやってくる。
 人を好きになる瞬間というのは、こういう感じだと思う。「好き」という感情は自分のものなのに、それが外からやってきて自分をのっとってしまう。

ちょうどぼくが叫びたくなると
ふしぎにその声はきこえはじめるのです
その声をじっときいていると
それはだんだんぼくの声に似てきます

 「だんだん」「似てくる」。「好き」という感情、「愛している」という感情も、だんだん好きや愛しているに似てくる。そして、好きや愛しているになる。






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詩集『誤読』は、嵯峨信之の詩集『時刻表』を批評するという形式で書いたものです。
オンデマンドで販売しています。100ページ。1500円(送料250円)
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