「一輪の花」は比喩。女を「一輪の花」ということはできる。嵯峨は、その「一輪の花」を、次のように言い直す。
瞬時の風ということはできよう
比喩を重ねるとき、比喩を貫くものは何だろうか。感覚か、知性(精神)か。区別はむずかしいが、そこに「ない」ものを結びつけることで、いままでつかみきれなかったものを明確にする。それは精神の運動といえるだろう。ことばは「精神」なのだ。
だから、こんな描写が可能になる。
あのひとはつつましい足どりで感情のうえをたち去つていつた
女を対象としてみているだけではなく、「感情」を対象としてみている。「精神」で世界をとらえなおしている。嵯峨の感情の上をと読むのが一般的だろうが、私は、女が女の感情の上を、と読みたい。愛が消えるとは、女そのものが変わることだからだ。
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詩集『誤読』は、嵯峨信之の詩集『時刻表』を批評するという形式で書いたものです。
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