嵯峨信之『OB抒情歌』(1988)(35) | 詩はどこにあるか

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* (あなたは直立ている)

日光と空気とをあつめた太い白樺の幹のように
白樺の幹のなかには千の蜜蜂の唸りがきこえる

 ここでも「白」が目立つ。「日光」の「日」は「白」に似ている。しかし、「蜜蜂」の比喩を経たあと、「白」は変化する。

あなたの豊かな肉体のなかには
海のような熱量の響がする。

 「あなたの肉体」は「白い肌」を持っているだろう。海は「白い波」を持っているだろう。それは隠されて、かわりに「唸り」からはじまった比喩が「響」になる。「千」は「熱量」と言い直され、「響」も抽象的になる。
 「転調」の準備だ。



*

詩集『誤読』は、嵯峨信之の詩集『時刻表』を批評するという形式で書いたものです。
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