嵯峨信之『OB抒情歌』(1988)(8) | 詩はどこにあるか

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* (そっとしておこう)

そっとしておこう
ぼくのまずしい小さな命を

 「命」とはなんだろうか。「まずしい」と「小さい」。ふたつの形容詞を積み重ねたのはどうしてだろうか。どちらを強調したいのだろうか。

ぼくの感情に少しばかり朱を点じよう
小さな生命をのせて蜜蜂のように唸らせよう

 「少しばかり」「小さな」。ふたたび似たことばが繰り返される。「命」は「生命」とことばを変える。
 変わらないのは「……おこう」「……しよう」「……せよう」である。「……せよう」は「使役形」をとっているが、同じように「意思」をあらわしている。何かをする、という意思が書かれている。しかし、それは実際には「行動」にはならない。嵯峨は動かない。「そっとしておこう」。何もしないで、想像のなかで動くだけなのだ。



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詩集『誤読』は、嵯峨信之の詩集『時刻表』を批評するという形式で書いたものです。
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