河野妙子『クロノスとカイロス』(書肆侃侃房、2019年08月08日発行)
河野妙子『クロノスとカイロス』の巻頭の「ちょっと」。
ちょっとは一寸、小さいけれど
十倍するといっしゃくで、その六倍はいっけんです
いっけんの真四角には畳が二枚も入ります
ひとつぼです 一寸 一尺 一間 一坪
それがわかると、ちょっとばかにはできません
「いっすんの虫にもごぶの魂」
ひとつぼあれば 魂はいくつはいるのでしょうか
両手をせいいっぱいにひろげ
はるをまつこのごろです
算数(数学)というか、論理をきちんと追った詩である。ことばが論理のなかでととのえられている。
この詩で私が注目したのが、「わかる」という動詞。
それがわかると、ちょっとばかにはできません
「わかる」はすぐに「ばかにできない」にかわっていく。この「ばかにできない」とは、どういうことか。「わからない」ということである。
河野は、こう言いなおしている。
「いっすんの虫にもごぶの魂」
ひとつぼあれば 魂はいくつはいるのでしょうか
これは、計算すれば「答え」が出せるかもしれない。でも、「答え」を出す必要はない。もし質問すれば、「すぐには答えられないくらい、いっぱいある」という「答えにならない答え」がすぐに返ってくる。そういうことは、「わかる」。直感的に「わかる」。
私は、こういうことを「肉体でわかる」という。つまり、その人の「思想で、わかる」のである。こういう「答え」に間違いはない。
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