* (魂しいを語の中に沈めてみた)
語はしずかにゆれ動き
日は暮れがたから雨になつた
何という語、あるいはどんな語だろうか。手がかりは「しずかに」と「ゆれ動く」。「魂しい」を沈める前は、揺れ動いてはいなかった。不動だった。そして、そのゆれ動きが「しずかに」というのだが、これは「ゆれ動く」という動詞よりも重要かもしれない。「しずかに」のなかに動詞の本質が隠されている。
この「しずかに」が次の行で「暮れがたから」に言いなおされていると思う。「沈めた」そのときから暮方までの、長い時間。あるいは「ゆれ動き」はじめたときから暮方までの、長い時間。それが「しずかに」の「意味」である。変化する時間は、変化の「様態」でもある。「雨」は「しずかに」がこらえきれずにあふれた「魂しい」の別の形である。「魂しい」は「しずかな雨」に「なつた」。
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詩集『誤読』は、嵯峨信之の詩集『時刻表』を批評するという形式で書いたものです。
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