嵯峨信之『土地の名-人間の名』(1986)(30) | 詩はどこにあるか

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* (文字板の上を)

文字板の上を這いずりまわる昆虫
虫たちの小さな出合い 別れ
司会者が笑いながらその時刻を空に書いている

 「司会者」とは誰だろうか。何の「比喩」だろうか。
 私は「太陽」を思い浮かべた。「時刻を空に書いている」。こういうことができるのは太陽だ。そして「時刻」は「正午(真昼)」を想像した。いちばん強い光が虫たちの影をいちばん小さくする。裸の虫たちが出合い、別れる、その瞬間を想像した。

 「這いずりまわる」というのは、私の耳には非音楽的に響く。けれど、そのあとの光景を「真昼」ととらえると、風景は一気に「絵画的」になる。そうして、そのあと明るい「笑い」が広がる。



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詩集『誤読』は、嵯峨信之の詩集『時刻表』を批評するという形式で書いたものです。
オンデマンドで販売しています。100ページ。1500円(送料250円)
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