水槽に水がいつぱい溜つていて
時の羽根が二、三枚
水底に沈んで光つている
「沈む」と「光る」は反対の動きをあらわしているわけではないが、どこかに相反する動きを持っている。「沈む」は静かな印象がある。重い、ということばも連想させる。「光」は逆に軽くて、華やか、派手である。水が「光」を鎮めているのかもしれない。相反するふたつの動きが拮抗し、それが「溜まる」という動詞になって、そこに存在している。
「時の羽根」は何の象徴かわからないが、「溜まる」を静かに揺らしている。「時」のなかにも「羽根」のなかにも、「いま」と「ここ」から離れていく何かがある。
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詩集『誤読』は、嵯峨信之の詩集『時刻表』を批評するという形式で書いたものです。
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