136 スパルタで
詩の背景について、池澤が歴史を説明してくれている。
スパルタの王クレオメネス三世(略)はマケドニアとアカイア同盟を相手の戦争で、エジプトのプトレマイオス三世の援助を求めた。それを受け入れる条件としてプトレマイオスはクレオメネスの子供たちと母クラテティシクレイアを人質としてアレクサンドリアに送ることを要求した。
この要求をクレオメネスは「屈辱」と感じた。母は、どうか。
屈辱については、そんなものは気にしない。
言うまでもなく、ラギディス一族ごとき成り上がりに
スパルタの精神がわかるはずがない。
彼女のような高貴な女性にとって、
スパルタ王の母にとって、
彼らの要求は屈辱と受け取るにも値しないものなのだ。
「屈辱」とは何か。自分よりも価値が低い人間(評価に値しない人間)の要求にしたがうことを、ふつうは屈辱と感じる。ところがこの母は「屈辱と受け取るにも値しない」と言う。
なぜか。「ラギディス一族ごとき成り上がりに」
スパルタの精神がわかるはずがない。
「精神」が重要である。さらに「わかる」が重要である。「精神がわかる」とは「精神を共有する」である。言い換えると「同じ価値観を生きる」である。
「同じ価値観」を生きていない人に何を言われようが、それは「批評」にはならない。無意味だ。
「スパルタの精神」はカヴァフィスには「ギリシャの精神」と言うに等しいのだろう。「ヘレニズム」と言い換えてもいいかもしれない。精神至上主義の強靱な思想をカヴァフィスは引き継いでいる。
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