96 亡命したビザンティンの一貴紳が詩を作る
散文的なタイトルの詩の最後も散文的だ。
神話を材に取り、ヘルメスやアポローン、
ディオニュソスや、テッサリアと
ペロポネソスの英雄たちを相手に楽しむ。
わたしは厳密きわまる強弱格を構築するが、
--はっきり申せば--コンスタンティノポリスの
学者どもはこの構築法を知らぬ。
この厳密さがおそらく彼らの不興を買った理由であろう。
「学者どもはこの構築法を知らぬ。」がおもしろい。カヴァフィスは彼の詩をささえている「厳密きわまる」ことばの「構築法」が学者に理解されないと間接的に言っているのかもしれない。そのとき、「構築法」ではなく「厳密さ」に焦点を当て直しているところが特におもしろい。学者は「構築法」は知っている。でも、それを「厳密に」つくることはできない。大切なのは「構築法」ではなく「厳密さ」なのだ。「構築法」は学ぶことができる。しかし、それを「厳密」に動かすというのは簡単には学べない。力量のさが「厳密さ」にあらわれる。
池澤の詩の主人公についての註釈。
これは架空の人物とするか否か、判断は微妙である。つまり、彼を東ローマ帝国の皇帝ミカエル七世と見ることは不可能ではなく、あるいはミカエル七世に触発された架空の人物とする方が自然ともとれる。
後者はそのままカヴァフィスということになるし、ミカエル七世であったとしてもミカエル七世自身が詩を書いているわけではないから、その場合も後者になる。
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