池澤夏樹のカヴァフィス(60) | 詩はどこにあるか

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詩の感想・批評や映画の感想、美術の感想、政治問題などを思いつくままに書いています。

60 オスロエネの町で

 酒場で喧嘩し、けがをした友だちのレーモンを描いている。


ここに集う我々は多種多様、シリア人、ギリシャ人、アルメニア人、メディア人
レーモンにしてもその一人だ。しかし昨日の夜
月に照された彼の官能的な顔を見ていて、
我々の心はプラトンのカルミデスへとおもむいた。


 この部分でおもしろいのは、レーモンはそれでは何人だったのか、それがわからないことだ。「官能」は何人であるかを問題にしない。
 池澤は「カルミデス」に註釈をつけている。完璧な肉体を持っている。


そこから善悪を識別する知恵の定義をソクラテスに導かせている。


 私は、「59 エンディミオンの像の前にて」との関係で、「月に照らされて」の方に興味を持った。そこにはこんな註釈がついていた。


エンディミオンは神話中の人物。美青年で月の女神セレネが彼に恋をし、ゼウスに頼んで彼を不老不死のまま永遠に眠るようにしてもらって、夜ごと訪れることにしたという。


 月の光と死、そして官能はギリシャでは絡み合っている。少なくとも、カヴァフィスは結びつけているのだと思う。


 


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