池澤夏樹のカヴァフィス(17)  | 詩はどこにあるか

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                         2019年01月05日(土曜日)

17 トロイ人

 注釈というよりも一般論になると思うのだが、池澤はこんなことを書いている。


戦いというものは実際に干戈を交える直前までははったりで相手の自身をうばう作業である。剣の勝負が決したとたんにはったりは嘘になる。


 これはいいなあ。安倍晋三に聞かせてやりたい。そのときは「剣の勝負が決したとたん」ではなく「剣の勝負が始まったとたん」と言いなおしたいが。
 戦争ははったりであり、国民ははったりの犠牲者である。
 それは勝った側でも同じだろう。


敗北を回避することは決してできない。城壁の
上にいる時から悲嘆の声はすでに聞こえていた。
心は過去の日々の記憶にすすり泣いている。
プリアモスとヘカベは我々を思ってさめざめと泣いている。


 「敗北」を「勝利」ではなく「死(戦死)」と置き換えてみるとわかる。必ずだれかが死ぬ。そして、その死を悲しむひとは必ずいる。その声が聞こえないのは為政者だけである。
 トロイの王と王妃を引き合いに出すまでもない。


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