高橋睦郎『つい昨日のこと』(27) | 詩はどこにあるか

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27 プラタナス アテナイ郊外


おう プラタナス 広い千の葉のいっせいにそよぐ木
肩幅の広い知恵の人 プラトンが とりわけ好んだ


 「広い千の葉」は「肩幅の広い」プラトンを通って、「言の広い葉」へと変わっていく。


はるかのちの日のわれらも娯しむ 言の広い葉たちの蔭で


 「言の広い葉」と「広い言の葉」とどう違うだろうか。「ことばの広さ」とはなんだろうか、と考えてみる。
 「言(こと)」は「事(こと)」かもしれない。「事」の方が「言」よりも広い。「言い表せない事」というものが、いつでも存在する。その言い表すことができないものの法へ広がっていく葉。
 「広い」を「広げる」と動詞にして読むのがいいのかもしれない。
 「結論」へ向かって収斂していくことばではなく、「結論」を壊して広がっていく葉、その生命力。