千人のオフィーリア(メモ30)
今夜、川がオフィーリアを発見した、そのすばらしい体を。
キスをするとき舌と舌が激しくもつれて、
「もっと」。ほかのことばが無意味になったみたいに「もっと」
こころが叫んだとき熱のある肌が大きく起伏して、
遠くでフクロウが闇に嘘をついていた。
春のやわらかい葉裏になって風が手のように動いた。
今夜、川は裸になってオフィーリアを追いかけ、
今夜、川はなめらかなまま光る激流になってオフィーリアをえぐり、
「もっと」。あえぎながら初めて自分をとりもどすオフィーリアの
すばらしい体に重なる裸として月に発見された。
橋の上を猫が音を立てずに歩いている
一枚の絵がしなやかに動いてきて鏡のなかに映る今夜。