千人のオフィーリア(メモ26) | 詩はどこにあるか

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千人のオフィーリア(メモ26)

先に恋したのは
ロミオだったかしらジュリエットだったかしら
先に死んだのは
ジュリエットだったかしらロミオだったかしら
綴じ糸がほどけた本みたい
正気ではいられない。
でも素敵ねえ、両親が敵対しているなんて

気づいたのは
私が先だったかしら、
--傷物にされたらどうしよう
お父さまが心配したから
私がその気になったのかしら。
ああつまらない。
お父さまは家臣。言われるがまま。
私にその気がなくっても、
--おおせのとおりに。
手に負えないドラマなんて
燃え上がる血、凍える血なんて
どこにもないなんて。
気づいていないわ、
お父さまは。
そう気づいたのはオフィーリアが先。

先に恋したのは
オフィーリアだったかしらロミオだったかしら
先に死んだのは
ハムレットだったかしらジュリエットだったかしら
先はどっち?
殺し合いをグローブ座の芝居がまねたのだったかしら
座付きの男が殺し合いを横取りしたのだったかしら





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詩集「改行」(2016年09月25日発行)、残部僅少。
1000円(送料込み/料金後払い)。
yachisyuso@gmail.com
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