千人のオフィーリア(メモ23) | 詩はどこにあるか

詩はどこにあるか

詩の感想・批評や映画の感想、美術の感想、政治問題などを思いつくままに書いています。

千人のオフィーリア(メモ23)

話そうとするとそばにいないオフィーリア。
新聞にはいちばん現実的な嘘のつき方が書いてある。
「えっ、たとえばどんな?
「調べてみたら? 東京発。パリ発。外電はでまかせ。
真実なんてないわ。好みがあるだけよ。

慰謝料と不倫。どちらが主張として正しいか知ってる?
慰謝料はお金。愛や肉欲よりも確かだわ。相手が誰でも自分は変わらない。
いてほしくないときにいて、
いてほしいときにいないオフィーリア。
「いるときにいてほしいくなり、
いないときにいなくてよかったことをすれば?

姉が賛成し妹が反対したオフィーリアみたい。
姉が反対し妹が賛成してくれると思っていた。
どうしていいかわからなくないオフィーリア。
パスポートをそっと開いて、
名前と顔を確かめるオフィーリア。
私は誰なのかしら。
パスポートの写真は嫌い。左のほほが緊張している。
自分の部屋にある鏡よりも姉の部屋にある鏡が好き。
「だって、きれいに映るのよ。

聞いてほしいのに聞いてくれないオフィーリア。





*

詩集「改行」(2016年09月25日発行)、残部僅少。
1000円(送料込み/料金後払い)。
yachisyuso@gmail.com
までご連絡ください。