千人のオフィーリア(メモ19)
知ってる? ここはポドマック通りよ。
明かりのかわりにピアノの音が水たまりを走ったからって
初物はいないわよ。あさっての通りを歩いてみるんだね。
いいえ、ここはトポマック通りじゃないわ。
おめあては口に出せないことば? ぶたれること?
入れたいの? 入れられたいの? なめたいの? なめられたいの?
そうよ、ドポマック通りよ、間違えないで。
「おれはなあ、細い紐を蝶結びにする発明をあの女に譲ってやった。
何言ってやがらあ、それで大儲けしたくせに」
だからホトマック通りだって。嘘ついたってしようがないでしょ。
そんな小さいものは引っぱりだしたって小便するしか能がないくせに。
マックポート通りは三つ先よ。あそこはね、
嘔吐の花ばかり。強烈な刺激に目をやられてあばたもえくぼに見えるって話さ。
ああ、ポートマックから来たのかい?
背中が凝ってるねえ。ももの裏側も。真ん中の足はどうだい?
そうだねえ、マクポッド通りへ行ってみるんだね。
鳥の羽であそこをなでてくれるさ。指をつばでしめらせるのは
本のページをめくるためだってさ。
知ってるよ、マグトッポ通りというのは嘘の名よ。
ストッキングを足の付け根まであげるとこを見せてくれる。
トグマッポ通り? 酔っぱらったら舌かみそうな通りなんか知らないよ。
湿った唇でも乾いた唇でも、みんなオフィーリア。
昔の名前も明日の名前もあるもんか。
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詩集「改行」(2016年09月25日発行)、残部僅少。
1000円(送料込み/料金後払い)。
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