千人のオフィーリア(メモ13) | 詩はどこにあるか

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千人のオフィーリア(メモ13)

水の抱擁。やわらかな、
--ねえ、オフィーリア。水に入るときは下着をつけたまま?
  ねえ、オフィーリア、下着を脱いだ方がいいの?
  ねえ、どっちがきれい?
水を覗いて思ったのはいつのことだろう。

水の抱擁。いじわるな、
手。ブラウスの下にすべりこみ、
               冷たい。
乳房をなでる。
       冷たい、
春を追いかける雪解けの匂い。
息を吐くとき、
洩れそうになる声を追い抜いて
のどへ。のどまで。犯すように。
絞め。
   殺されたい。
頼んだら。
するりとブラウスの外へ逃げる。
いくじなし。
童貞の少年みたい。
じれったい。

未練のように。
布越しに、なでる。
手のひらの形で
色になる。
透けて。

袖口のさくらんぼの絵に縫いつけられた、
蝶結びのリボン。
スミレやバラではなく、
誰も名前を知らない花だけを束ねて、
透けていく胸を隠したい。

見られていると考えると、体中が罪の色に染まる
見られていないと考えると、体中が憎しみの色に染まる。
--ねえ、オフィーリア。水に入るときは下着をつけたまま?
  ねえ、オフィーリア、下着を脱いだ方がいいの?
  ねえ、どっちが醜い?

こうなったら、目をそむけさせたいの。











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