千人のオフィーリア(メモ4) | 詩はどこにあるか

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千人のオフィーリア(メモ4)

イルミネーションとエッジの強いミュージック、
まばゆいもの汚れた傷を隠すしかない船の客たちが、
さかのぼってくる潮が喫水線をゆするよう叫ぶ。
--八百九十七人目のオフィーリアを見つけたぞ。
--どこだ、右舷か、左舷か。
--どれだ。スカートの裾が破れたやつか、あれならもう見たぞ。
--どれだ。乳房を水にひからせているやつか、そいつは七百三十二人目だ。

黒い水。銀の波。排水のけだるさとつながる水の、
粘るようなぬるさのなかに閉じ込められて、
流される私たち。千人のオフィーリア。
こんな夜中にカモメが飛んでくる。高みから降りてくる。何を見つけた?
こんな夜中に、橋のためもとコンクリートの階段で
千人のオフィーリアと船を見比べている男。何をみつけるために?

オフィーリアよ、私は捨てられた女の亡霊、
あるいはハムレットの父の亡霊だ。
未来へ向けてさまよい流れていく運命だ。




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