声/異聞声/異聞呼ばれて振り返ったが誰もいなかった。声が残っていて、その暗い部分に窓があった。窓の外には夜があった。夜の樹がカポーティの部屋をのぞいていた。そんなことがありうるのか。ありえないからこそ、あったのだ。覚えている。あったとこは、けっしてなくなることはない。何を言っていいのかわからなかった。声もわからないまま、ことばを探しているのがわかった。夜が鏡になった。鏡が窓になった。その部屋。私は半透明の自分の内部をのぞいているか。輪郭のない樹になって、声を茂らせているのか。