期待外れ。
「スター・ウォーズ」の魅力は、結局「ダス・ベーダ」だったのだ。悪役が弱いとまったくおもしろくない。で、その悪役がハン・ソロとレイヤ姫の息子。父と息子が「愛憎」のなかで出合うなんて、安っぽいメロドラマ。
悪役がハン・ソロとレイヤ姫のあいだの息子なら、主人公(?)のレイはルークとだれかのあいだの子ども? 次の作品では、そういうことが描かれる? そんなもの、見たくないなあ。
第一作の登場人物(キャラクター)が「ヨーダ」「オビ・ワン・ケノビ」をのぞいて出てきて、「復習」をかねたつくりになっているのだけれど、おもしろみにかける。新キャラクターが、ボール型ロボットだけというのも、つまらない。
主人公の「フォースの覚醒」がストーリーといえばストーリーだけれど、こんな見え透いたタイトルも興ざめ。いきなりダークサイトの騎士と対面し、そこで覚醒するというのも「紙芝居」。
つじつまを合わせようとしすぎている。
唯一おもしろいと思ったのは、白いヘルメットの兵士の最初のシーン。仲間が倒れる。その体に触れる。血が流れている。その血が兵士のヘルメットに三本、指の跡となって残る。あ、「スター・ウォーズ」って、血を描いてきたっけ? 宇宙での戦闘が中心で、もっぱら宇宙船が壊れるだけ。ライトセーバーをつかってのルークとダス・ベーダの戦いだって、腕が切られても血は出なかったように思う。出ていたかもしれないが、今回のように、「血」としてくっきり見えるようには描かれていなかったと思う。(思い出せない。)で、あ、今回は血(肉体)がリアルに描かれるのか……と期待したのだが、そうではなかった。
やっぱりダークサイトとフォースという「精神面」の戦いが主流。
でもさあ。
ダークサイトとフォースの戦いというのは、結局、人間の「成長物語」だね。何を悪と判断し、それをどう乗り越えていくか。精神の葛藤。だからこそ、そこに「父/子」の対立というか、「父」を乗り越えていく「息子」というストーリーが必要になってくる。一種の「神話」だね。
それが、今回のように遠い記憶(少女が泣いている)のような形でぽつんと出されてもねえ。これでは、「神話」のはじまりというよりも、捨てられた少女(両親がだれが、描かれていない)の「トラウマ」の克服にすぎない。まあ、次回で、いろいろ見せてくれるのかもしれないけれど。
主役を女性にかえ、脇役にアフリカ系を登場させるというのは、「現代風」のアレンジなのかもしれないが、わざとらしい「新味」だなあ。背景も、砂漠も、森も、海も、宇宙も……と舞台も総花的で、これといった見どころがない。あ、これは私が、もう「宇宙ものの特撮」になれてしまったということかな? 特撮よりも、途中に出てくるチープな酒場(ごちゃまぜのキャラクター)の部分に「手作り」の味を感じ、こっちの方がおもしろいのに、と思った私はあまのじゃく?
気になったのが、主人公の少女が持っている「長い棒」のようなもの。最初と、最後は大事そうに持っていたけれど、途中はほったかし。次回からの「ライトセーバー」?
(天神東宝スクリーン1、2015年12月20日)
*
「映画館に行こう」にご参加下さい。
映画館で見た映画(いま映画館で見ることのできる映画)に限定したレビューのサイトです。
https://www.facebook.com/groups/1512173462358822/
![]() | アート・オブ・スター・ウォーズ/フォースの覚醒 |
フィル・スゾタック,リック・カーター | |
ヴィレッジブックス |