★を5個つけたけれど、傑作というわけではない。おもしろいというわけでもない。CGだらけ、新しい映像だらけの映画が多いなかにあって、「古くさい」感じが楽しかったなあ。「現代」ではなく「過去」を描いているから、まあ、「新しい」映像では困るんだけれど、「古くささ」にこだわったところがよかった。
唯一のアクション(?)はカーチェイスだけれど、これもねえ、車が古いからスピードも鈍い。これが楽しい。えっ、いま、どうなった? と目をこらしていなくてもいい。私は目が悪いので、これくらいのスピードがいいなあ。(「エベレスト」は見たいけれど3Dなので、パス。)
電話がダイヤル式、呼び出し音は一種類、通話には雑音が入るなんて、いいなあ。盗聴器が大きい、ダサイ、のもいいし、女がスカートの下(ストッキングの上)につけていく「発信機」も大きくて、とってもいい。それをわざわざスカートをめくって見せるなんて、うーん、「古くさい」。いまどき、それくらいのシーンでは誰も色っぽいとは思わない。でも、それが逆に「人間臭い」。
おっ、「古くさい」と「人間臭い」が韻を踏んでしまった。
この「くさい」って何かなあ。「においがする」「感じられる」ということかな? で、その「においがする」というとき、鼻が動いているねえ。ほんとうに「においがする」わけではないのだから、これは「無意識の肉体としての鼻」ということになるのかな? あ、めんどうくさい話になりそう。(ここもに「くさい」が出てくるなあ。)よくわからないが「……くさい」というとき、まあ、「肉体」が反応してるんだろう。言い換えると、その瞬間、「肉体」が映画のなかに踏み込んでいる。映画なのに、どこかで「現実」と思い込んでいる。これがおもしろい。
最近のスパイ映画というのは、「ミッション・インポッシブル」がそうだけれど、あんなこと観客にはできないね。飛行機につかまって空を飛ぶなんて、できない。風が強くて目すら開けていられないはずだよね。見ていても、その「場」に参加できない。驚きはするけれど、「肉体」がざわめかない。「痛い」とすら思わない。
そこへ行くと、この映画は違うなあ。拷問だって、笑いながら、その拷問を自分の「肉体」で味わうことができる。ただ「痛い」と感じさせるだけではなく、「これは映画」という「オチ」のようなもので、安心させてくれる。
で、これに、男と女のやりとりがからんでくる。「肉体」のからみだけではなく、「感情」のからみがストーリーのカギになる。クライマックスでナポレオン・ソロが敵の女ボスを呼び出すために、わざと「お前の夫は男としてだらしない」というような作り話をする。それに女が感情的に反応して、女の居場所がわかる、なんて、わっ、おもしろい。どんなときでも、怒った方が負け(感情的になった方が負け)。
これなんて、スパイ映画というよりは「恋愛映画」の領域だよなあ。
映像の色調や、画面を分割して、同時に複数のシーンを見せるという「手法」も古くさくて、とっても楽しい。
あ、この楽しさは、テレビで「ナポレオン・ソロ」を見ていた年代の人間が感じるだけかもしれないけれどね。いまの若い世代は、なぜ、こんなに古くさい(レトロ?)な映画をつくらなければならないのか、わからないかもしれないなあ。
(t-joy博多スクリーン9、2015年11月15日)
*
「映画館に行こう」にご参加下さい。
映画館で見た映画(いま映画館で見ることのできる映画)に限定したレビューのサイトです。
https://www.facebook.com/groups/1512173462358822/
![]() | ロック、ストック&トゥー・スモーキング・バレルズ [DVD] |
クリエーター情報なし | |
ソニー・ピクチャーズエンタテインメント |