ガイ・リッチー監督「コードネーム U.N.C.L.E. 」(★★★+★★) | 詩はどこにあるか

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監督 ガイ・リッチー 出演 ヘンリー・カビル、アーミー・ハマー、アリシア・ビカンダー

 ★を5個つけたけれど、傑作というわけではない。おもしろいというわけでもない。CGだらけ、新しい映像だらけの映画が多いなかにあって、「古くさい」感じが楽しかったなあ。「現代」ではなく「過去」を描いているから、まあ、「新しい」映像では困るんだけれど、「古くささ」にこだわったところがよかった。
 唯一のアクション(?)はカーチェイスだけれど、これもねえ、車が古いからスピードも鈍い。これが楽しい。えっ、いま、どうなった? と目をこらしていなくてもいい。私は目が悪いので、これくらいのスピードがいいなあ。(「エベレスト」は見たいけれど3Dなので、パス。)
 電話がダイヤル式、呼び出し音は一種類、通話には雑音が入るなんて、いいなあ。盗聴器が大きい、ダサイ、のもいいし、女がスカートの下(ストッキングの上)につけていく「発信機」も大きくて、とってもいい。それをわざわざスカートをめくって見せるなんて、うーん、「古くさい」。いまどき、それくらいのシーンでは誰も色っぽいとは思わない。でも、それが逆に「人間臭い」。
 おっ、「古くさい」と「人間臭い」が韻を踏んでしまった。
 この「くさい」って何かなあ。「においがする」「感じられる」ということかな? で、その「においがする」というとき、鼻が動いているねえ。ほんとうに「においがする」わけではないのだから、これは「無意識の肉体としての鼻」ということになるのかな? あ、めんどうくさい話になりそう。(ここもに「くさい」が出てくるなあ。)よくわからないが「……くさい」というとき、まあ、「肉体」が反応してるんだろう。言い換えると、その瞬間、「肉体」が映画のなかに踏み込んでいる。映画なのに、どこかで「現実」と思い込んでいる。これがおもしろい。
 最近のスパイ映画というのは、「ミッション・インポッシブル」がそうだけれど、あんなこと観客にはできないね。飛行機につかまって空を飛ぶなんて、できない。風が強くて目すら開けていられないはずだよね。見ていても、その「場」に参加できない。驚きはするけれど、「肉体」がざわめかない。「痛い」とすら思わない。
 そこへ行くと、この映画は違うなあ。拷問だって、笑いながら、その拷問を自分の「肉体」で味わうことができる。ただ「痛い」と感じさせるだけではなく、「これは映画」という「オチ」のようなもので、安心させてくれる。
 で、これに、男と女のやりとりがからんでくる。「肉体」のからみだけではなく、「感情」のからみがストーリーのカギになる。クライマックスでナポレオン・ソロが敵の女ボスを呼び出すために、わざと「お前の夫は男としてだらしない」というような作り話をする。それに女が感情的に反応して、女の居場所がわかる、なんて、わっ、おもしろい。どんなときでも、怒った方が負け(感情的になった方が負け)。
 これなんて、スパイ映画というよりは「恋愛映画」の領域だよなあ。
 映像の色調や、画面を分割して、同時に複数のシーンを見せるという「手法」も古くさくて、とっても楽しい。
 あ、この楽しさは、テレビで「ナポレオン・ソロ」を見ていた年代の人間が感じるだけかもしれないけれどね。いまの若い世代は、なぜ、こんなに古くさい(レトロ?)な映画をつくらなければならないのか、わからないかもしれないなあ。
               (t-joy博多スクリーン9、2015年11月15日)





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