監督 ジョン・ヒューストン 出演 ハンフリー・ボガート、キャサリン・ヘップバーン
荒唐無稽なストーリー。でも、これをたった二人(ハンフリー・ボガート、キャサリン・ヘップバーン)に演じさせたので、荒唐無稽ではなくなった。(ほかにも何人か出てくるが、ほとんど二人だけ)。なぜかというと、すべてが二人の感情の動きとして表現されてしまうからだ。起きていることが荒唐無稽でも、人間の感情には荒唐無稽はない。「年増女」と言われれば、むっとする。キスされれば感じてしまう。ほれられればがんばろうと思う。強がりもする。
キャサリン・ヘップバーンはうまい。ほんとうに、うまい。あの、美人でもない顔、しかも若くない顔が、喜びの瞬間、輝き出して美しく見える。感情がはつらつと動けばだれでもが美しくなれるのだ。
最初の急流下りがおもしろい。ジェットコースターみたいなものだが、怖さよりも、おもしろさ。味わったことのないことに興奮してしまう。そんなはずがないだろう、といいたいけれど、えっ、キャサリン・ヘップバーンって、こういうことに興奮するんだと、「役」と「本人」を混同してしまう。
だんだんお転婆(?)になって男(ハンフリー・ボガート)を振り回し、振り回すことで男を夢中にさせるというのはオードリー・ヘップバーンの得意とする役どころだが、これをキャサリンがやってしまうところが、とてもおもしろい。きゃしゃなお人形さんではなく、皺の目立つ年増女だから、アフリカの過酷な自然がよく似合う。強さに納得してしまう。
ハンフリー・ボガートは、あいかわらずの、何もしない演技(まあ、今回はかなり動くけれど)で女を引き立て、女を引き立てることができる「いい男」になっている。不思議だ。困惑し、文句をいいながら、女の注文をきちんとこなしてしまう。その、こなしかたにジェームズ・ボンドとは違う「生身」の感覚がある。はつらつ(?)としていないので、これくらいなら俺にもできるかな、と思わせる。中年恋愛ヒーローの「星」かも。文句をいいながら、やってしまうところが、女から見れば「かわいい」のかも。きっとどこかで手伝うということが起きて、自分がいなければだめなんだ、と女に勘違いさせるのかな?(女から何か言われたら、文句をいいながら、こなそう。--もてるコツ)
だれが思いついたキャスティングか知らないが、だれでも恋愛アドベンチャーの主役になることができることを教えてくれる映画。「感情」が主役なのだから「芝居」でもよさそうなのだが、アフリカの「野生」の自然のなかで、人間(キャサリン・ヘップバーン)の「野生」が輝くというのが見せ所なので、これはやっぱり映画ならでは、だね。
(「午前十時の映画祭」2015年07月24日、天神東宝4)
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