「どうしても」ということばが、夢のようにしつこくあらわれてきた。「破る」ということばを遠くから引き寄せて「夢のなかで本のページを破らなければならないのに、それができない」ということばに組み立てたあと「どうしても」手に力が入らない、という「声」になった。
泣きそうだった。いいわけをしているのだった。
見たのだった。「朱泥の剥げた鏡」ということばは「浴室」ということばといっしょにあり、「剃刀」ということばがさびたまま濡れていた。それは、鏡の裏側へつづく長い廊下へつながり、そのなかを歩いていく男は角をまがらないまま、私のなかで消えた。それは夢の本のページを何度破っても、あたらしく印刷されて増えてくる。
それから突然電話が鳴って、何を「破った」ためのなか、電話の音は夢のなかへは戻らないのだった。
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