外と内と、
「朝の六時から雨が降りはじめていた」ということばは、「三時からだった」ということばによってさっとかき消された。
テーブルの上の黄色い白熱球。その光が硝子窓に映っている。
互いのことばを憎んでいる二つの影は、
「無言のまま、海が灰色に変わるのをみつめていた」。
ひとりの日記にそう書かれたあと、
「悲しみの断崖」ということばと同じように記憶になってしまった。
遠くで鴎の鳴く声、近くで青いガスの花の開く音。
「外からやってくるのか、私のなかから聞こえてくるのかわかならかった」ということばは、風のない日に聞こえるあの音、雨が海に触れるの音のよう。