二時を過ぎると路地の向こう、電車通りをトラックが通り抜ける音が聞こえる。
バスもタクシーも走らなくなったためにトラックの音が聞こえるのか、
電車がいなくなってトラックが集まってくるために聞こえるのか。
暗い人は、いま書いたことばをベッドサイドの椅子に座って読み返す。
ジャケットのなかで肩を回して背中をほぐし、大通りを拡げていく。
二時を過ぎると、耳のなかへ電車通りをトラックが通り抜ける音が押し寄せてくる。
眼は美術館の角の信号の色を思い出すが、街路樹の花の色を思い出せない。
必要なのは地下鉄の階段をのぼってくる匂いを破壊する排気ガスの塊かもしれない。
書きなおしながら、暗い人は間違えた。
坂の上から見た海から運河をのぼってくる潮を挿入する場所がない。
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