細い階段のぼったところにある | 詩はどこにあるか

詩はどこにあるか

詩の感想・批評や映画の感想、美術の感想、政治問題などを思いつくままに書いています。

細い階段のぼったところにある

細い階段を上ったところにあるコーヒー店で、
ことばはきのうの詩のつづきになろうとする。

壁の棚には小さな白いカップがすっかり整頓されている。
その輪郭の反射が見えるだけの、つらくなるような薄暗さ。

ふたりは目をあわせないようにしながら視線の端で相手を確認していた。
テーブルの上ではコーヒーが冷えてざらざらした味にかわる。

--出ようか。
聞こえないふりをすると、

--出ようかと言ったのが聞こえないのか、聞きたくないのか。
--いいよ、ここに用はない。

(この男はけしからん奴だという思いが
ひとこと聞くごとに確信にかわってゆく。)

ということばを、どちらの男の胸のなかに走らせればいいのか。
ことばは迷いながら細い階段へのドアを描写する、その詩。


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